モリストSPで上達する練習法|初心者向けテクニック

数ある卓球ラバーの中でも、長年にわたりトップ選手から愛好家まで幅広く支持されているニッタクの「モリストSP」。特に、伊藤美誠選手がバック面に使用していることで有名で、その多彩なプレーに憧れて手に取る方も多いのではないでしょうか。

しかし、「表ソフトラバーは難しそう」「初心者には扱えないのでは?」といった不安を感じるかもしれません。この記事では、そんな初心者の方々に向けて、モリストSPの特徴を活かし、着実に上達するための基本テクニックと具体的な練習法を徹底解説します。モリストSPという最高の武器を使いこなし、あなたの卓球を一段階上へと引き上げましょう。

なぜモリストSPは初心者の上達に適しているのか?

モリストSPは、単なる上級者向けのラバーではありません。その優れたバランス性能は、実は初心者が卓球の基本を学び、成長していく過程で大きな助けとなります。ここでは、モリストSPが初心者の上達に適している3つの理由を解説します。

特徴①:スピードとナックルの絶妙なバランス

モリストSPの最大の魅力は、直線的で鋭いスピードボールと、相手の回転を打ち消して無回転(ナックル)で返球する自然な変化を両立している点です。ニッタク公式サイトによると、スピード性能が「12.50」と高い数値を誇る一方で、意図せずともナックル性のボールが出るため、相手のミスを誘いやすくなります。

初心者にとっては、自分で複雑な変化をつけようとしなくても、ラバーの特性が自動的に相手を惑わすボールを生み出してくれるため、「試合で勝つ」という成功体験を得やすいのです。この「スピード」と「変化」のバランスが、攻撃の楽しさと戦術の奥深さを同時に教えてくれます。

特徴②:テンション系ながら扱いやすいコントロール性能

モリストSPは、ボールの弾みを高める「テンション技術」が搭載されたラバーです。一般的にテンション系ラバーは弾みが強く、初心者にはコントロールが難しいとされがちです。しかし、モリストSPはスポンジ硬度が「30.0」(ドイツ基準で40.0)と比較的柔らかめに設計されており、ボールがラバーに食い込みやすくなっています。

この食い込みの良さが、テンション系表ソフトにありがちな「暴れ馬」のような挙動を抑え、安定した返球をサポートします。ネット上でも「テンション系とは思えない安定感とコントロール性能」と評価されており、初めて表ソフトを使う選手でも安心してスイングできる扱いやすさを持っています。

特徴③:多彩な戦術を可能にする万能性

スマッシュのような速攻だけでなく、ブロック、ツッツキ、そしてドライブまで、幅広い技術に対応できるのがモリストSPの強みです。裏ソフトラバーのように回転でねじ伏せるのではなく、スピード、ナックル、そして時折見せる回転ボールを織り交ぜることで、相手に的を絞らせない多彩な戦術を展開できます。

初心者の段階から「打つ」だけでなく「止める」「変化させる」といった多様なプレーに触れることで、卓球の戦術的思考が自然と身につき、ワンパターンなプレーから脱却するきっかけを与えてくれます。

モリストSPの性能を最大限に引き出す基本テクニック

モリストSPを使いこなすためには、裏ソフトラバーとは異なる、表ソフト特有の打ち方を習得する必要があります。ここでは、初心者がまず覚えるべき3つの基本テクニックを紹介します。

ミート打ち(角度打ち):表ソフトの基本をマスターする

ミート打ちとは、ボールに回転をかけず、ラケットの面を立てて弾くように打つ技術です。これは表ソフトの最も基本的かつ強力な攻撃方法です。この打ち方によって、相手の回転の影響を受けにくい特性を最大限に活かせます。

  • コツ① ラケット面を立てる:床に対してラケット面が垂直に近くなるように意識します。裏ソフトのように面を被せると、ボールがネットを越えません。
  • コツ② コンパクトなスイング:大きなスイングは不要です。体の正面で、ボールを「パチン」と弾くようなイメージでコンパクトに振り抜きます。
  • コツ③ 打点を落とさない:ボールがバウンドの頂点に達したところを捉えるのが理想です。打点が落ちると威力が半減してしまいます。

まずは、少し浮いたチャンスボールをミート打ちで確実に決める練習から始めましょう。

ナックルブロック:相手の強打をチャンスに変える

モリストSPの真骨頂とも言えるのが、相手のドライブ攻撃に対するブロックです。強く打ち返すのではなく、ラケットの角度を合わせてボールの勢いを吸収するように当てると、回転のないナックルボールとなって返球されます。

相手からすると、上回転のドライブを打ったはずなのに、無回転のボールが返ってくるため、次のボールを持ち上げられずにネットミスをしやすくなります。これは守備でありながら、非常に攻撃的な技術と言えます。

練習では、相手にドライブを打ってもらい、力を抜いてラケットに当てるだけの感覚を掴みましょう。ボールがラケットに当たる瞬間に少しラケットを引くようにすると、より変化の大きいナックルが出やすくなります。

表ソフトでのドライブ:下回転を攻略する

「表ソフトではドライブは打てない」と思われがちですが、モリストSPは下回転のボールを持ち上げることも可能です。ただし、裏ソフトとは感覚が大きく異なります。表ソフトでのドライブを打つにあたり、いくつかの重要なポイントがあります。

  • 厚く捉える:ボールを薄く擦るのではなく、ボールの背後をしっかりと捉え、ラバーに食い込ませるイメージで打ちます。
  • 上方向へのスイング:前方向へ振る意識よりも、下から上へ持ち上げるスイングを心がけます。これにより、最低限の弧線が生まれます。
  • 手首の活用:フリスビーを投げるように、インパクトの瞬間に少しだけ手首を使うと、回転を補助することができます。

最初は安定しなくても、ツッツキなどの下回転ボールをドライブで返球する練習を繰り返すことで、攻撃の幅が格段に広がります。

初心者向け|レベル別・モリストSP上達練習メニュー

ここでは、モリストSPを使い始めた初心者が段階的にスキルアップしていくための練習メニューを3つのステップで紹介します。自分のレベルに合わせて、焦らず着実に進めていきましょう。

ステップ1:感覚を養う基本練習

まずはモリストSPの打球感に慣れ、基本的なボールコントロールを身につけることが目標です。

  • ワンコースでのミート打ち:フォアハンド、バックハンドそれぞれで、相手にボールを送ってもらい、一定のコースにミート打ちで返球し続ける練習です。まずはラリーを続けることを意識し、ラケット角度や打点を安定させます。
  • 多球練習でのブロック:送球者に一定のコースへドライブボールを送ってもらい、ひたすらブロックします。「当てるだけ」のナックルブロックと、「少し押す」スピードブロックの2種類を使い分ける感覚を養います。

ステップ2:技術を組み合わせる応用練習

基本技術が安定してきたら、複数の技術を組み合わせ、より実戦に近い動きを取り入れます。

  • フォアとバックの切り替え練習:多くのトップ選手も行う基本的なフットワーク練習です。フォア側とバック側に交互にボールを送ってもらい、素早く切り返します。モリストSPの速い球離れに合わせた、コンパクトなスイングと素早い戻りを意識しましょう。
  • サーブからの3球目攻撃:自分のサーブ(特にナックルサーブや少し上回転のサーブ)から、返ってきたレシーブをミート打ちで攻撃するパターン練習です。相手の返球が浮きやすいモリストSPの特性を活かすための重要な戦術です。

ステップ3:実戦を意識したパターン練習

試合での得点パターンを確立するための練習です。

  • 下回転とナックルの打ち分け練習:プロコーチも推奨する練習法として、送球者にツッツキ(下回転)とナックル性のボールをランダムに出してもらい、それをドライブやミート打ちで攻撃します。回転量の違いに瞬時に対応する判断力と技術を磨きます。
  • バック対バックからの展開練習:バックハンドでのラリーから、相手がフォアに振ってきたボールに対応する、あるいは自分から相手のフォアへ展開する練習です。前陣での速いピッチのラリー戦で主導権を握るために不可欠です。

モリストSPと相性の良いラケット選びのポイント

ラバーの性能を最大限に引き出すには、ラケットとの組み合わせも重要です。モリストSPの良さを活かすためのラケット選びの基本的な考え方を紹介します。

初心者におすすめ:木材合板ラケット

卓球を始めたばかりの初心者には、5枚合板や7枚合板といった木材のみで作られたラケットがおすすめです。初心者向けの用具選びでは、まず打球感覚を養うことが最優先とされています。木材ラケットはボールを掴む感覚に優れており、弾みすぎないため、モリストSPのコントロール性能と相まって、安定したプレーを助けてくれます。まずは基本的なフォームと打球感を身につけるのに最適です。

中級者を目指すなら:特殊素材(インナー)ラケット

ある程度技術が身につき、さらなる威力を求めるなら、カーボンなどの特殊素材が入ったラケットが選択肢になります。中でも、アリレートカーボン(ALC)などの特殊素材が中心材の近くに配置された「インナーフォース」タイプのラケットは、木材の球持ちの良さを残しつつ、威力を向上させることができます。またモリストSPとインナーフォースレイヤーALCの組み合わせを行うことで、スピードと安定性の高い次元での両立を目指せます。

まとめ:モリストSPで卓球をさらに楽しむために

モリストSPは、スピード、変化、そしてコントロール性能を高いレベルで兼ね備えた、非常に懐の深いラバーです。初心者にとっては、試合で勝ちやすいだけでなく、卓球の多様な技術や戦術を学ぶための最高の教材となり得ます。

伊藤美誠選手の言葉を借りれば、「自分でも予測できないくらい、回転がかかったりナックルになったりして、いやらしいボールが出ます」。

この記事で紹介した基本テクニックと練習法を参考に、まずはボールを弾く「ミート打ち」の爽快感を味わい、次に相手が嫌がる「ナックルブロック」で試合の主導権を握ってみてください。モリストSPは、使い込むほどに新たな発見があり、あなたの卓球をより深く、楽しいものにしてくれるはずです。焦らず、じっくりとこの万能ラバーと向き合い、自分だけのプレースタイルを築き上げていきましょう。

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