ファスタークシリーズ初心者向けセッティングガイド

数多くのトップ選手に愛され、卓球用品店で常に人気上位にランクインするニッタクの「ファスターク」シリーズ。その高性能さから「上級者向け」というイメージが強いかもしれませんが、実はシリーズのラインナップを正しく理解し、適切なセッティングを選べば、初心者や初級者にとっても非常に心強い武器となります。

この記事では、「ファスタークを使ってみたいけれど、どれを選べばいいかわからない」という初心者の方に向けて、各モデルの特徴からおすすめのラケットとの組み合わせまで、失敗しないためのセッティングガイドを徹底解説します。

ファスタークシリーズとは? – 卓球界のロングセラーラバー

ファスタークシリーズは、日本の大手卓球メーカー「Nittaku(ニッタク)」が展開する、ドイツ製の高性能テンション系裏ソフトラバーです。その名前は「Fast(速さ)」と「Arc(弧線)」を組み合わせた造語であり、その名の通り、スピードと美しい弧線を描くボール軌道を両立させることをコンセプトに開発されました。

2010年7月に最初のモデル「G-1」が発売されて以来、その卓越した性能で多くのプレイヤーの支持を獲得。現在では、主に以下の4つのモデルが主力としてラインナップされており、それぞれ異なるプレースタイルに対応しています。

  • ファスターク G-1:スピンドライブ重視
  • ファスターク C-1:バランスラリー重視
  • ファスターク S-1:スピードスマッシュ重視
  • ファスターク P-1:スピードドライブ重視

この多様なラインナップこそが、ファスタークシリーズが初心者からトッププロまで、幅広い層に選ばれ続ける理由の一つです。

初心者がファスタークを選ぶ際の基本原則

高性能なラバーを使いこなすためには、まず自分のレベルに合ったものを選ぶことが不可欠です。特に初心者の方は、以下の2つのポイントを意識することが、上達への近道となります。

なぜ「硬さ」と「厚さ」が重要なのか?

ラバー選びの基本として、「スポンジの硬さ」と「厚さ」は打球感やボールのコントロール性能に直結します。

  • 硬さ:一般的に、ラバーは柔らかいほどボールが食い込みやすく、コントロールが安定します。逆に硬いラバーは反発力が高く、威力のあるボールを打てますが、自分の力でしっかりと食い込ませる技術(スイングスピードやインパクトの強さ)が求められます。
  • 厚さ:スポンジは薄いほど打球感が手に伝わりやすく、コントロールしやすくなります。厚くなるにつれてボールの威力は増しますが、その分ラケット全体の重量が増し、繊細なボールタッチが難しくなる傾向があります。

したがって、ボールをコントロールする感覚を養う段階にある初心者は、「柔らかめ」で「中」や「厚」といった厚さのラバーから始めるのがセオリーです。

プレースタイルとラバーの相性

「どんな卓球がしたいか」という目標を持つことも、用具選びの重要な指針です。例えば、「ラリーを安定させてミスを減らしたい」のか、「前陣で速い攻撃を仕掛けたい」のかによって、最適なラバーは変わってきます。ファスタークシリーズは各モデルのコンセプトが明確なため、自分の目指すプレースタイルに合った一枚を見つけやすいのが特徴です。

それでは、具体的に初心者・初級者におすすめのファスタークシリーズのモデルを見ていきましょう。ここでは特に「S-1」「C-1」、そして挑戦的な選択肢としての「G-1」を解説します。

【最初の1枚に最適】ファスタークS-1:扱いやすさとスピードの両立

「スピードスマッシュ重視」をコンセプトとするファスタークS-1は、シリーズの中で最もスポンジが柔らかく、軽量なモデルです。そのため、ボールがラバーによく食い込み、自分の力で回転をかける感覚を掴みやすいのが最大の特徴。テンションラバー特有の「勝手に飛んでいってしまう」感覚が少なく、コントロール性能に優れています。

S-1はシリーズ中最も柔らかく、中級者でも使用者のいる高性能、かつ扱い易い部類に入りますので、入門編としては申し分ないはずです。

これからテンションラバーに挑戦したい初心者や、基礎技術をしっかりと身につけたい初級者にとって、まさに最初の1枚として最適なラバーと言えるでしょう。

【安定性を求めるなら】ファスタークC-1:攻守のバランスが光る万能ラバー

「バランスラリー重視」を謳うファスタークC-1は、”;Catch(掴む)”の頭文字が示す通り、ボールをしっかり掴む感覚に優れたラバーです。シートはG-1と同じグリップ力の高い「テンションスピンシート」を採用しつつ、スポンジはS-1と同じく中硬度(ドイツ硬度45.0度)のものを組み合わせています。

この組み合わせにより、「G-1の回転性能」と「S-1の扱いやすさ」を両立させているのがC-1の魅力です。ボールが自然な弧線を描いて上に飛びやすく、ネットミスを恐れずにラリーを展開できる安心感があります。攻撃だけでなく、ブロックやカウンターといった守備的な技術も安定するため、攻守のバランスを重視したいプレイヤーや、バックハンドの安定性を高めたい初級者〜中級者に最適な一枚です。

【上級者への挑戦】ファスタークG-1:憧れのトップ仕様を使いこなすには?

シリーズのフラッグシップモデルであり、伊藤美誠選手をはじめとする多くのトップ選手が使用するファスタークG-1。その強烈なスピン性能と威力は誰もが憧れるところです。しかし、ドイツ硬度47.5度という硬めのスポンジは、初心者が扱うには難しい側面もあります。しっかりとしたスイングができないと、ラバーの性能を十分に引き出せず、かえってボールが不安定になる可能性があります。

ただし、絶対に初心者が使えないわけではありません。もしG-1に挑戦したいのであれば、ラケットの選択が鍵となります。弾みの強い特殊素材ラケットではなく、ボールの飛びを抑え、コントロール性能を高める木材合板ラケットと組み合わせることで、G-1の硬さを緩和し、扱いやすくすることが可能です。ある程度基礎が固まり、さらなる威力を求めるステップアップの段階で検討するのが良いでしょう。

初心者向けセッティング提案:ラケットとの組み合わせ

ラバーの性能はラケットとの組み合わせによって大きく変わります。ここでは、初心者の方がファスタークシリーズを最大限に活かすための具体的なセッティング案を3つご紹介します。

セッティング案①:安定性重視で基礎を固める「S-1 × 木材5枚合板」

フォア面:ファスタークS-1(厚)/ バック面:ファスタークS-1(中)

この組み合わせは、コントロール性能を最優先した、まさに初心者向けの王道セッティングです。柔らかく軽量なS-1と、しなりがあって球持ちの良い木材5枚合板ラケットを合わせることで、ボールを掴んで運ぶ感覚を養うのに最適です。まずはこの組み合わせで、安定したラリーと正しいスイングフォームを身につけることを目指しましょう。

セッティング案②:攻守のバランスを学ぶ「C-1 × 木材5枚合板」

フォア面:ファスタークC-1(厚)/ バック面:ファスタークC-1(厚)

基礎がある程度できてきて、「もう少し回転や威力が欲しい」と感じ始めたらこのセッティングがおすすめです。C-1の持つ高いグリップ力と安定性が、ドライブの回転のかけ方や、相手のボールに対するブロックの感覚を教えてくれます。S-1からのステップアップとして、また、最初から攻守のバランスを意識したい場合に適しています。

セッティング案③:威力へのステップアップ「G-1 × インナーカーボン」

フォア面:ファスタークG-1(厚)/ バック面:ファスタークC-1(厚)

中級者へのステップアップを見据えた、やや挑戦的なセッティングです。フォア面には憧れのG-1を配置し、威力を追求。バック面には安定感のあるC-1を貼り、攻守のメリハリをつけます。ラケットには、特殊素材(カーボン)が内側に入っているインナータイプのラケットを選ぶのがポイント。これにより、G-1の硬さを適度に緩和しつつ、木材ラケットにはないスピード性能を加えることができます。

まとめ:自分に合ったファスタークで卓球を楽しもう

ファスタークシリーズは、上級者だけのものではありません。各モデルの特性を理解し、自分のレベルや目指すプレースタイルに合ったラバーとラケットを組み合わせることで、初心者でもその高性能の恩恵を受けることができます。

  1. 最初の1枚なら「ファスタークS-1」:扱いやすさとコントロール性能で、基礎技術の習得をサポートします。
  2. 安定したラリーを目指すなら「ファスタークC-1」:攻守のバランスに優れ、ミスを減らしながら回転を学ぶのに最適です。
  3. 威力に挑戦するなら「ファスタークG-1」:コントロールしやすい木材ラケットと組み合わせることで、トップ仕様の性能に挑戦できます。

この記事を参考に、ぜひあなたにぴったりのファスタークを見つけて、卓球の新たなステージへの扉を開いてください。自分に合った用具は、卓球を何倍も楽しくしてくれるはずです。

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