卓球を始めたばかりの方が最初にぶつかる壁の一つが「用具選び」です。特に、ボールの飛び方や回転に直接影響するラバー選びは、上達のスピードを左右する重要な要素です。しかし、数多くの種類があるため、「どれを選べば良いかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、日本の大手卓球メーカー「ニッタク(Nittaku)」の製品に絞り、初心者の方が自分に合ったラバーを見つけるための選び方のポイントと、具体的なおすすめラバー5選をレベル別に詳しく解説します。
卓球ラバー選びの基本:初心者が知るべき3つのポイント
高性能なラバーに目が行きがちですが、初心者のうちは「ボールをコントロールする感覚」を養うことが最も大切です。まずは基本となる3つのポイントを押さえましょう。
ポイント1:ラバーの種類は「裏ソフト」から始めよう
卓球のラバーは、主に「裏ソフト」「表ソフト」「粒高ソフト」「アンチスピン」の4種類に大別されます。それぞれに特徴がありますが、初心者が最初に選ぶべきなのは「裏ソフトラバー」です。
裏ソフトラバーは表面が平らで摩擦力が大きく、ボールに回転をかけやすいのが最大の特徴です。ドライブやツッツキといった卓球の基本的な技術は、ボールに回転をかけることで成り立っています。そのため、回転をかける感覚を身につけやすい裏ソフトラバーは、基礎技術の習得に最適です。現在、攻撃型の選手を中心に最も広く使われているのもこのタイプです。
- 裏ソフトラバー:表面が平らで摩擦力が強い。回転をかけやすく、現代卓球の基本技術習得に不可欠。
- 表ソフトラバー:表面に粒がある。球離れが速くスピードが出やすいが、回転量は少ない。
- 粒高ラバー:表ソフトより粒が長く、相手の回転を利用した変化ボールを出しやすい。
- アンチスピンラバー:表面が滑りやすく、回転がほとんどかからない特殊なラバー。
ポイント2:スポンジの「厚さ」と「硬さ」を理解する
ラバーは、ボールを打つゴム製の「シート」とその下の「スポンジ」から構成されています。このスポンジの「厚さ」と「硬さ」が、打球感やボールの性能を大きく左右します。
スポンジの厚さ
スポンジが厚くなるほどボールが食い込み、反発力が増してスピードや威力が出やすくなります。しかし、その分ボールが飛びすぎてしまい、コントロールが難しくなるという側面もあります。初心者のうちは、コントロールのしやすさを重視し、「中」または「厚」から選ぶのがおすすめです。ニッタクの基準では、「中」が1.3mm〜1.5mm、「厚」が1.7mm〜1.9mm程度に設定されています。
スポンジの硬度
スポンジの硬度は、ボールの食い込みやすさとコントロール性能に影響します。柔らかいスポンジはボールが深く食い込むため、自分でコントロールしている感覚を掴みやすく、安定性が高まります。一方、硬いスポンジは反発力が高く、より威力のあるボールを打てますが、自分の力でしっかりと食い込ませる技術が必要です。初心者はまず、ボールを掴む感覚を養うために「柔らかめ(スポンジ硬度30〜35度程度)」のラバーを選ぶと良いでしょう。
ポイント3:「良いラバー」=「今の自分に合ったラバー」
トップ選手が使っているラバーは非常に高性能ですが、それは彼らの高い技術力があって初めて性能を引き出せるものです。初心者がいきなり使うと、スピードが出すぎてミスが増えたり、重くて振り切れなかったりする原因になります。
スピードが出るあまりコントロールがうまくいかずミスをしてしまっては、「良いラバー」とは言えません。一番大事なのは「今の自分に合ったラバー」を選ぶことです。
— ニッタクがオススメするラバーの選び方
まずはコントロール性能を重視したラバーで基本技術をしっかりと身につけ、上達に合わせて徐々にステップアップしていくことが、結果的に上達への一番の近道です。
【レベル別】初心者におすすめのニッタク(Nittaku)人気ラバー5選
ここからは、上記の選び方のポイントを踏まえ、ニッタクの豊富なラインナップの中から初心者におすすめのラバーを5つ厳選してご紹介します。「これから始める方」から「次のステップへ進みたい方」まで、レベルに合わせて選んでみてください。
1. ルーキング|基本技術を習得するための入門ラバー
「ルーキング」は、ニッタクが「基礎を習得しよう!」というコンセプトで開発した、まさに卓球入門者のための裏ソフトラバーです。フォア打ち、バック打ち、ツッツキといった基本的な技術を安定して行うことに適しており、ボールをコントロールする感覚を養うのに最適です。
スポンジ硬度は32.5度と柔らかめで、ボールがラバーに食い込む感覚が分かりやすくなっています。価格も手頃なため、初めてのラバーとして安心して選べる一枚です。
- スピード: 8.00
- スピン: 9.25
- スポンジ硬度: 32.5度
- 特徴: コントロール性能、基礎技術の習得しやすさ
2. ファクティブ|次のステップを目指す万能ラバー
「ファクティブ」は、”Active”(積極的)なプレーを目指す初・中級者のために開発されたテンション系裏ソフトラバーです。テンション系ラバーは弾みが良いのが特徴ですが、「ファクティブ」は弾みすぎずコントロールしやすい絶妙なバランスを実現しています。「癖がない」と評されることが多く、自分のプレースタイルを見つけるための基準となるラバーとしても最適です。
ボールをグッと掴む感覚があり、サーブやレシーブ、台上プレーでの安定感が高いのが魅力。基礎がある程度固まり、「もう少し威力が欲しい」「試合で勝てるようになりたい」と考え始めた選手におすすめです。
- スピード: 14.75
- スピン: 11.75
- スポンジ硬度: 35.0度
- 特徴: スピード・スピン・コントロールの好バランス、高いグリップ力
3. ファスターク G-1|トップを目指すための王道ラバー
「ファスターク G-1」は、ニッタクの裏ソフトラバーの中で絶大な人気と実績を誇るベストセラーです。”Fast(速さ)”と”Arc(弧線)”をコンセプトに開発され、多くのトップ選手に愛用されています。
グリップ力に優れたシートが強烈なスピンを生み出し、硬めのスポンジが相手の強打に打ち負けないパワーを発揮します。初心者にとってはやや扱いにくい面もありますが、基本技術をマスターし、より高いレベルでドライブ主体の攻撃的なプレーを目指す選手にとっては、最高の武器となり得るラバーです。将来のステップアップを見据えた「目標」として、名前を覚えておくと良いでしょう。
- スピード: 15.00
- スピン: 12.50
- スポンジ硬度: 37.5度
- 特徴: 圧倒的なスピン性能とパワー、高いグリップ力
4. モリストSP|速攻と変化で戦う表ソフトラバー
ここまでは裏ソフトラバーを紹介してきましたが、プレースタイルによっては「表ソフトラバー」も選択肢になります。「モリストSP」は、伊藤美誠選手が使用していることでも有名な、テンション系表ソフトのロングセラー商品です。
表ソフトラバーは、球離れが速く、直線的でシャープなスピードボールを打てるのが特徴です。また、相手の回転の影響を受けにくく、ナックル(無回転)性のボールを出しやすいため、相手のリズムを崩す戦術的なプレーが可能になります。「モリストSP」はスピードとナックル性のブロック、そして表ソフトとしては回転もかけやすいというバランスの良さが魅力です。前陣での速いラリーや、変化をつけたプレーで戦いたいと考える初心者の方におすすめです。
- スピード: 12.50
- スピン: 7.50
- スポンジ硬度: 30.0度
- 特徴: スピード、ナックル、回転のバランスが良い表ソフト
5. マイクロ|コストパフォーマンスに優れた長持ちラバー

「マイクロ」は、長年にわたり初心者向けラバーとして支持されてきたコントロール系裏ソフトラバーです。最大の特徴は、コストパフォーマンスの高さと耐久性です。酸化などの劣化からシートを守る「ロングライフ製法」が採用されており、性能が長持ちします。
スポンジ硬度は30度と非常に柔らかく、優れたコントロール性能を発揮します。これから卓球を始める方や、部活動などで練習量が多く、ラバーの消耗が気になる学生プレーヤーにとって、非常に心強い選択肢となるでしょう。ニッタク製品の中でも特に手頃な価格帯であることも魅力です。
- スピード: 8.00
- スピン: 8.50
- スポンジ硬度: 30.0度
- 特徴: 高いコントロール性能、耐久性、コストパフォーマンス
ニッタクおすすめ初心者向けラバー性能比較
今回ご紹介した5つのラバーの性能をグラフで比較してみましょう。スピードとスピンは数値が高いほど性能が高く、スポンジ硬度は数値が低いほど柔らかくコントロールしやすくなります。自分の目指すレベルやプレースタイルに合わせて参考にしてください。
グラフの読み方:「ルーキング」と「マイクロ」はスピード・スピンが控えめな分、コントロール性能に優れています。「ファクティブ」は全ての性能がバランス良く高く、ステップアップに最適です。「ファスターク G-1」はスピードとスピンが突出しており、攻撃力を求める選手向けであることがわかります。「モリストSP」は表ソフトのためスピン性能は低いですが、スピード性能は高いという特徴が見て取れます。
よくある質問(FAQ)
- Q1. ラバーはいつ貼り替えるべきですか?
- A1. ラバーは消耗品です。トップ選手は1週間程度で貼り替えますが、一般的には練習時間80時間が目安とされています。表面が白っぽくなったり、ボールが滑るように感じたら替え時です。練習頻度に関わらず自然劣化も進むため、半年に一度は状態を確認しましょう。
- Q2. ラバーの色(赤と黒)に性能の違いはありますか?
- A2. かつては色の違いで性能に差がありましたが、現在の製造技術では性能差はほとんどありません。ルールでラケットの両面に異なる色(赤と黒)を貼ることが義務付けられているため、両面に貼る場合は2色を選ぶ必要があります。どちらの色をフォア面にするかは好みで決めて問題ありません。
- Q3. ラバーは自分で貼れますか?
- A3. はい、専用の接着剤を使えば自分で貼ることも可能です。しかし、初めての方や綺麗に貼る自信がない場合は、卓球専門店で貼ってもらうことをおすすめします。多くのショップでは、ラケットとラバーを同時に購入すると無料で貼り付けサービスを行っています。お店の方に相談してみましょう。
まとめ:自分に合ったラバーで卓球をさらに楽しもう
今回は、ニッタク製品の中から初心者におすすめのラバーを5つご紹介しました。ラバー選びで最も大切なのは、背伸びをせず、今の自分の技術レベルに合ったものを選ぶことです。コントロールしやすいラバーで基本をしっかり身につけることが、上達への一番の近道となります。
この記事で紹介した選び方のポイントやラバーの性能を参考に、ぜひあなたにぴったりの一枚を見つけてください。自分に合ったラバーと出会えれば、卓球はもっと楽しく、奥深いものになるはずです。