1. バタフライ『ラウンデル』とは?
バタフライ『ラウンデル』は、2009年5月21日に発売されて以来、多くの卓球プレイヤーに愛用され続けているハイテンション裏ソフトラバーです。そのコンセプトは「プレイヤーのポテンシャル(潜在能力)を引き出す」こと。スピード、スピン、コントロールといった卓球に不可欠な要素を高次元で調和させ、ダイナミックな打球と繊細なボールタッチを両立させることを目指して開発されました。
特に、柔らかいシートとスポンジがもたらす優れたコントロール性能は、テンション系ラバーの入門用として、また安定感を求める中級者にとって最適な選択肢の一つとなっています。これからステップアップを目指す選手が、自分のプレースタイルを見つけ、技術を磨くための「羅針盤」のような存在と言えるでしょう。
基本スペック
『ラウンデル』の基本的な仕様は以下の通りです。バタフライ社は2023年2月に性能指標を改定しており、新旧両方のデータを参考にすると、ラバーの特性をより深く理解できます。
- 製品名: ラウンデル (ROUNDELL)
- 品番: 05860
- 価格: 4,620円(税込)
- 種類: ハイテンション裏ソフトラバー
- テクノロジー: ハイテンション
- スポンジ硬度: 35
- スポンジ厚: 2.1mm, 1.9mm, 1.7mm
- 原産国: 日本
性能指標(2023年改定後):
スピード: 77 / スピン: 43 / 弧線: 58
※バタフライ公式サイトによる新評価基準。スピードとスピンだけでなく、打球の弧線の描きやすさも指標化されています。
性能指標(旧基準):
スピード: 12.8 / スピン: 10.2
※卓球ナビなどで見られる従来の評価基準。他のラバーと比較する際の参考になります。
2. 『ラウンデル』の3つの主要な特徴
『ラウンデル』が長年にわたり支持される理由は、その絶妙な性能バランスにあります。ここでは、その特徴を3つのポイントに絞って解説します。
特徴①:抜群のコントロール性能
『ラウンデル』の最大の特徴は、その卓越したコントロール性能です。柔らかめのシートとスポンジ硬度35の組み合わせにより、ボールがラバーに食い込みやすく、「球持ちが良い」感覚を得られます。これにより、インパクトの瞬間にボールをしっかりと掴むことができ、自分の意図した通りの場所にボールを運びやすくなります。卓球メディアRallysの分析でも、このコントロールのしやすさが台上技術の安定につながると指摘されています。テンションラバー特有の「飛び出しすぎてしまう」という悩みを抱えるプレイヤーにとって、この安定感は大きな武器となります。
特徴②:ボールを掴む感覚と回転のかけやすさ
優れた球持ちは、回転のかけやすさにも直結します。ボールを掴む時間が長いため、インパクトの際にしっかりと摩擦をかけることができ、強打時だけでなく、つなぎのループドライブやサーブ、レシーブといった繊細なタッチが求められる場面でも安定してスピンを効かせることが可能です。これにより、攻撃的なプレーだけでなく、試合を組み立てる上での戦術の幅も広がります。
特徴③:スピードと心地よい打球音の調和
コントロール性能に優れながらも、『ラウンデル』はハイテンション・ラバーとしてのスピード性能も兼ね備えています。強打した際には、スピードグルー(補助剤)を使用した時のような心地よい金属音とともに、鋭いボールが放たれます。このスピード、スピン、コントロール、そして打球音の調和が、『ラウンデル』が「ダイナミックな打球」と「繊細な感覚」を両立させると言われる所以です。多くのレビューで、このバランスの良さが高く評価されています。
3. 『ラウンデル』はどんなプレイヤーにおすすめか?
そのバランスの取れた性能から、『ラウンデル』は非常に幅広い層のプレイヤーに適しています。
- ステップアップを目指す初・中級者: コントロールがしやすく、ドライブやツッツキなどの基本技術の感覚を養うのに最適です。「テンションラバーは難しそう」と感じる初心者が最初に選ぶ一枚として、また、基礎から応用へ移行する中級者の成長を力強くサポートします。
- 安定志向の攻撃型プレイヤー: 威力は求めたいが、ミスは減らしたいという攻撃型プレイヤーにフィットします。特に、安定したループドライブを武器にラリーの主導権を握りたい選手にとって、ラウンデルの球持ちの良さは大きな安心感をもたらします。フォア、バックどちらにも使える万能性も魅力です。
- バックハンドでの使用を考えているプレイヤー: バックハンドはフォアハンドに比べてスイングがコンパクトになりがちですが、ラウンデルは比較的楽にボールを飛ばし、回転をかけることができます。安定したブロックやカウンターを重視するプレースタイルにも適しています。
ユーザーレビューでは「テンション系ラバーの入門としていいラバー」「技術が安定していない方はラウンデルの方がオススメ」といった声が多く見られ、ステップアップの過程で非常に頼りになる存在であることがうかがえます。
4. 『ラウンデル』シリーズの比較:標準・ソフト・ハードの違い
『ラウンデル』には、スポンジ硬度が異なる3つのバリエーションが存在します。それぞれの特徴を理解し、自分のプレースタイルに合ったものを選びましょう。
- ラウンデル (硬度35): 本記事で解説している標準モデル。スピード、スピン、コントロールのバランスが最も取れており、幅広いプレイヤーに対応します。迷ったらまずこのモデルから試すのが良いでしょう。
- ラウンデル ソフト (硬度32): スポンジが最も柔らかく、コントロール性能と安定性がさらに向上しています。より球持ちを重視し、打球の安定感を求める初級者や女性プレイヤーにおすすめです。Rallysの記事でも、初・中級者やレディース選手向けとして紹介されています。
- ラウンデル ハード (硬度40): スポンジが硬くなることで、より威力のあるボールが打てるようになります。しっかりとしたインパクトができる上級者や、ブロックやミート打ちで鋭さを求めるハードヒッター向けのモデルです。
右のレーダーチャートは、海外の卓球レビューサイト「Revspin.net」のユーザー評価を基に3つのラバーの性能を比較したものです。『ハード』はスピンとスピードでわずかに高い評価を得ており、『ソフト』はコントロールで優位性が見られます。標準の『ラウンデル』は、すべての項目でバランスが取れていることが視覚的にわかります。
5. 他の人気ラバーとの比較:『ロゼナ』『テナジー05』との位置づけ
『ラウンデル』の立ち位置をより明確にするため、同じバタフライ社の人気ラバーである『ロゼナ』と、世界のトップ選手が使用する『テナジー05』と比較してみましょう。
『ロゼナ』は、『ラウンデル』からのステップアップとしてよく比較されるラバーです。性能的には『ラウンデル』より一段階上に位置し、よりスピードとスピン性能が強化されています。一方で、『ラウンデル』は「意図せずボールが飛んでいくことが少ない」というレビューもあり、コントロールのしやすさでは『ラウンデル』に分があると言えます。
『テナジー05』は、長年にわたりプロ・アマ問わず絶大な支持を得るハイエンドラバーの代名詞です。その圧倒的なスピン性能とスピードは他の追随を許しませんが、非常に高性能であるため、使いこなすには高い技術レベルが要求されます。また、価格も『ラウンデル』の倍近くします。
下のグラフは、これら3つのラバーの性能を比較したものです。『ラウンデル』は、トップエンドの性能を持つ『テナジー05』と、その性能をより多くのプレイヤーに扱いやすくした『ロゼナ』の中間に位置し、特にコントロール性能とコストパフォーマンスのバランスに優れたラバーであることがわかります。
6. まとめ:『ラウンデル』はステップアップを目指すプレイヤーの羅針盤
バタフライ『ラウンデル』は、発売から15年以上が経過した現在でも、その価値を失わない名作ラバーです。その核心は、「優れたコントロール性能」と「バランスの良さ」にあります。
最新の高性能ラバーが次々と登場する中で、『ラウンデル』は突出したスピードやスピンを追求するのではなく、プレイヤーが安心してスイングでき、自分の技術と向き合う時間を与えてくれます。テンションラバーの爽快感を味わいながらも、ボールをしっかりと掴んでコントロールする感覚を養えるため、まさに「プレイヤーの潜在能力を引き出す」というコンセプトを体現したラバーと言えるでしょう。
これから卓球を本格的に始めたい方、基本技術を固めて次のレベルへ進みたい方、そして何より安定したプレーで勝利を目指したい方にとって、『ラウンデル』は最高のパートナーとなるはずです。
注意点: 公式サイトにも記載がある通り、『ラウンデル』の表面はデリケートで傷つきやすいため、使用後は必ず保護フィルムで表面をガードすることが推奨されています。




