ヤサカ「エルフラークRF」徹底解説:妖精のイタズラが再び、その性能とプレースタイルへの影響


エルフラークRFとは?― 変化系表ソフトの新たな選択肢

ヤサカ(Yasaka)から登場した「エルフラークRF」は、卓球ラバーの中でも「変化系表ソフト」というニッチながらも強力な個性を持つ一枚です。「エルフラーク」という名前は「妖精のイタズラ」を意味し、その名の通り、相手を幻惑するような予測不能なボールを生み出すことをコンセプトとしています。

このラバーは、かつて存在した「エルフラーク」の後継モデルですが、単なる復刻版ではありません。卓球専門メディアの報道によると、6年半の時を経て、現代卓球のニーズに合わせて全く新しく再設計されたラバーです。変化系表ソフトは、一般的な表ソフトと粒高ラバーの中間的な特性を持ち、特にナックル(無回転)ボールを出しやすいのが最大の特徴。回転が主流の現代卓球において、その「変化」は大きな武器となり得ます。

変化系表ソフトとは、粒がやや細い、または高いためにナックルボールが出しやすいラバーのこと。攻撃の威力は出しにくいものの、チャンスメイクに優れ、裏ソフトなどと組み合わせる異質スタイルの選手に向いています。

性能の進化:初代エルフラークとの比較

エルフラークRFは、初代モデルからどのような進化を遂げたのでしょうか。その核心は、粒形状とスポンジ硬度の二つの大きな変更点にあります。

粒形状とトップシートの再設計

最も顕著な変更点は、ラバー表面の粒形状です。ヤサカの発表によれば、粒の形状は以下のように変更されました。

  • 初代エルフラーク:台形+円柱型(直径1.5mm / 高さ1.2mm)
  • エルフラークRF:円柱型(直径1.8mm / 高さ1.4mm)

RFでは粒がより高く、太くなり、見た目は粒高ラバーに近くなりました。これにより、ボールが当たった際に粒が倒れやすくなり、相手の回転を打ち消す効果や、予測しにくいナックルボールを生成する能力が向上しています。さらに、トップシート自体のグリップ力も高められており、ただ変化を生むだけでなく、安定した攻撃も可能にしています。

スポンジ硬度の変更とその意図

もう一つの重要な変更がスポンジ硬度です。初代モデルが40~45度であったのに対し、エルフラークRFは47~52度と、より硬いスポンジが採用されています。

この硬度アップには明確な意図があります。ヤサカの矢尾板駿社長は、「あまりに軟らかいスポンジだと回転はかけやすくなるが、変化が出にくくなってしまう。回転のかけやすさと変化の出しやすさのバランスを取った硬さ」と説明しています。硬いスポンジは、ボールが食い込みすぎないため、ナックル性のボールを出しやすくし、同時に強打時のエネルギーロスを抑え、攻撃の安定性を高める効果があります。

パフォーマンス指標の比較

公式発表されている性能値を比較すると、その設計思想がより明確になります。初代エルフラークとエルフラークRFの性能を見てみましょう。

RFは硬度が大幅に上昇し、スピン性能もわずかに向上しています。一方でスピード値は若干抑えられていますが、これは粒の高さによる変化性能を優先した結果と考えられます。コントロール性能は高いレベルで維持されており、変化系ながらも扱いやすさを両立させようとする設計思想が伺えます。

エルフラークRFがもたらすプレースタイルの可能性

進化したエルフラークRFは、プレーヤーにどのような新たな戦術をもたらすのでしょうか。その特性から、いくつかのプレースタイルでの活躍が期待されます。

「打てる粒高」としての攻撃性能

エルフラークRFは、使用者レビューで「非常に打ちやすい粒高」と評されることがあります。これは、粒高のような変化を出しつつも、表ソフトのように攻撃できるという二面性を的確に表しています。硬めのスポンジとグリップ力のあるシートにより、相手のボールに対して打ち負けにくく、安定したブロックやカウンター攻撃が可能です。特に、相手のループドライブに対して、ナックル性のブロックで返球し、浮いてきたチャンスボールをスマッシュで叩く、といった戦術が有効です。

ナックルボールという名の「武器」

このラバーの最大の魅力は、やはり質の高いナックルボールです。高く、倒れやすい粒が相手の回転を吸収し、無回転に近いボールを低く、速く相手コートに送り込みます。あるユーザーは、「ナックルカットがゆっくり飛んでいき、相手がオーバーミスをしてくれる」と評価しており、回転量の変化で相手のミスを誘うプレーが非常に効果的です。特にサーブレシーブにおいて、相手の回転を気にせず安定して返球できる点は大きなアドバンテージとなります。

カットマンや異質攻撃型への適性

エルフラークRFは、異質攻撃型の選手だけでなく、カット主戦型の選手にも適性があります。専門サイトでは、「相手の回転の影響を受けにくく安定した返球がしやすいので、初めて変化系表ラバーを使う異質攻撃型やカットマンにもオススメ」と紹介されています。カットの際には、粒高のような切れ味は出にくいものの、安定して低く抑えられたナックル性のカットを送ることができ、相手の強打を防ぎつつ、反撃の機会をうかがうことができます。

ユーザーレビューから見る実像

実際にエルフラークRFを使用したプレーヤーからは、様々な声が寄せられています。

  • 肯定的な意見:「変化系表ソフトの中では扱いやすい」「ブロックが非常にやりやすく、ナックルが出る」「レシーブが安定する」「チャンスメイクに最適なラバー」といった評価が多く見られます。その万能性から、様々な技術を駆使できる中〜上級者に高く評価されています。
  • 注意点:一方で、「自分のスイングが遅いと回転がほとんどかからず、扱いにくい」という意見もあります。これは、ラバーの性能を最大限に引き出すには、ある程度のスイングスピードと、変化を活かすための戦術理解が必要であることを示唆しています。決して初心者向けの簡単なラバーではなく、「変化系ラバーの経験者」や「自分の武器を模索する中上級者」向けのラバーと言えるでしょう。

購入ガイドと製品情報

エルフラークRFは、全国の卓球用品店およびオンラインストアで購入可能です。以下に製品の基本情報をまとめます。

  • 製品名:ヤサカ エルフラークRF (Yasaka ELFRARK RF)
  • 分類:変化系表ソフトラバー
  • スポンジ厚さ:中、極薄、OX(スポンジなし)
  • カラー:赤、黒
  • スポンジ硬度:47~52度
  • 定価(税込):¥4,400(OXは¥3,960)

Amazonでも取り扱いがあり、手軽に購入することができます。

まとめ:エルフラークRFはどんな選手におすすめか?

ヤサカ「エルフラークRF」は、単なる変化系ラバーではなく、攻撃的な要素と安定性を高いレベルで融合させた、現代卓球に対応する戦略的な一枚です。その特性を最大限に活かせるのは、以下のような選手でしょう。

  1. 人と違う武器を求める異質攻撃型選手:ナックルボールで相手を崩し、次のボールで決定打を狙うスタイルに最適です。
  2. 攻撃もしたいカット主戦型選手:安定したカットで守りつつ、隙を見て攻撃に転じたいプレーヤーにとって、攻守のバランスが良い選択肢となります。
  3. 表ソフトの安定感と粒高の変化を両立させたい選手:どちらか一方のラバーでは物足りなさを感じているプレーヤーに、新たな可能性を提供します。

「妖精のイタズラ」は、使い手の技術と戦術次第で、相手にとって悪夢のような武器に変わります。自分の卓球に新たなスパイスを加えたい方は、この個性的でアグレッシブなラバーを試してみてはいかがでしょうか。