ヤサカ オリジナルTバージョンとは?
ヤサカの「オリジナルTバージョン」(品番: B-49)は、長年にわたり多くのプレイヤーに愛され続けている、スピード系の表ソフトラバーです。その歴史は古く、シドニー・アテネ五輪の日本代表選手が開発に携わった名作として知られています。
このラバーは、ヤサカのクラシックな表ソフト「オリジナル」のトップシートを、より攻撃的に改良したものです。高弾性のスポンジと組み合わせることで、スピード性能を大幅に向上させています。テンション技術が主流となる以前から存在する「高弾性ラバー」に分類され、ボールを叩いた時の爽快な打球感と、直線的な弾道が大きな魅力です。
「オリジナル」のトップシートをより攻撃的に改良し、高弾性スポンジを採用することで更に威力がUPしました。
スピード、スピン、コントロールのバランスが良く、特に前陣での速攻プレーを目指す選手にとって、強力な武器となり得る一枚です。
主要性能とスペック分析
公式スペックと性能バランス
オリジナルTバージョンの公式スペックは、その性能特性を明確に示しています。多くの販売サイトやヤサカのカタログデータで共通して以下の数値が公表されています。
- スピード: 9
- スピン: 6+
- コントロール: 8
- スポンジ硬度: 30~35度
この数値から、オリジナルTバージョンがスピードを重視しつつも、表ソフトラバーとしては良好なコントロール性能を維持していることがわかります。「スピン:6+」という表記は、自分から回転をかける能力も一定以上備えていることを示唆しています。右のグラフは、これらの性能バランスを視覚化したものです。スピード性能が突出しており、攻撃的なプレースタイルに適していることが一目瞭然です。
構造的特徴:硬いシートと柔らかいスポンジの融合
オリジナルTバージョンの独特な打球感は、その構造に由来します。詳細なレビューによると、このラバーは「かなり硬いトップシート」と「やや柔らかめの高弾性スポンジ」という対照的な組み合わせで構成されています。
- トップシート:粒が太く、間隔が狭い設計で、非常に硬く作られています。これにより、ボールを叩いた際にブレが少なく、鋭い弾道を生み出します。粒が曲がりにくいため、相手の回転の影響を受けにくいという利点もあります。
- スポンジ:30~35度という硬度は、現代の基準では比較的柔らかい部類に入ります。このソフトな高弾性スポンジがボールを適度に食い込ませ、コントロール性能と安定性を確保しています。
この「硬いシート+柔らかいスポンジ」の組み合わせにより、打球感は全体として「少し硬め」で、球離れは「少し早い」と感じられます。インパクトの瞬間にボールを弾き飛ばす感覚が強く、スマッシュやミート打ちで威力を発揮する設計です。
実際の打球感とパフォーマンス評価
スペックや構造だけでなく、実際のプレーでどのような性能を発揮するのかが最も重要です。多くのユーザーレビューから、その具体的なパフォーマンスが見えてきます。
スピードと弾道
スピード性能は、オリジナルTバージョンの最大の武器です。高弾性スポンジが生み出す弾みは強く、特に前陣でコンパクトに振った際のボールの速さは特筆に値します。弾道は直線的で、相手コートに鋭く突き刺さるような球質が特徴です。あるレビュアーは「ショートピンプルの表ソフトとしては弾力はやや強めで、飛距離の伸びもやや出やすい」と評価しており、攻撃的なラリーで主導権を握りたいプレイヤーに適しています。
スピン性能とナックル効果
オリジナルTバージョンは、ただ速いだけのラバーではありません。強いインパクトでボールを捉えることで、表ソフトとしては十分な回転を生み出すことができます。一部のレビューでは「TSPスペクトルより少しスピンがかかる」とも評されています。これにより、単調な速攻だけでなく、回転を加えたドライブ性のボールで変化をつけることも可能です。
一方で、軽く当てるだけのブロックやプッシュでは、相手の回転を消したナックルボールが出やすい傾向にあります。この球質の変化を使い分けることで、相手を効果的に揺さぶることができます。
コントロールと扱いやすさ
公式スペックで「コントロール:8」とされている通り、攻撃的な性能を持ちながらも扱いやすさには定評があります。ユーザーからは「ブロックも安定感抜群」「強打しても滑る感覚がなく、安心してガンガンと打っていける」といった声が寄せられています。これは、ボールの軌道がブレにくく、狙ったコースに打ちやすい特性を示しています。表ソフトラバーの中では比較的扱いやすい部類に入り、中級者がステップアップするために選ぶ一枚としても適しています。
他の主要な表ソフトラバーとの比較
オリジナルTバージョンをより深く理解するために、他の有名な表ソフトラバーと比較してみましょう。
オリジナル vs. オリジナルTバージョン
名前が似ている「オリジナル」と「オリジナルTバージョン」ですが、その性能は明確に異なります。日本の卓球掲示板では「別物です」と断言されています。
- オリジナル:昔ながらの表ソフトで、変化の大きいナックルボールが出やすいのが特徴。攻撃力よりも、変化で相手を惑わすプレースタイルに向いています。
- オリジナルTバージョン:攻撃的に改良されたトップシートと高弾性スポンジにより、スピードと威力を重視。より現代的な速攻スタイルに適しています。扱いやすさの点でもTバージョンの方が優れているという評価が多いです。
スペクトル (TSP/VICTAS) との比較
「スペクトル」は、表ソフトの代名詞とも言える超ロングセラーラバーです。オリジナルTバージョンは、しばしばこのスペクトルと比較されます。
- スピード:一般的にスペクトルのほうがスピード性能は若干上とされています。
- スピン:オリジナルTバージョンの方が、シートがボールを掴む感覚があり、回転をかけやすいと評価されています。
- 打球感:オリジナルTバージョンの方が、スペクトルよりもやや柔らかい打球感で、球持ちが良いと感じるプレイヤーが多いようです。
どちらもスピード系の名作ですが、スピードのスペクトル、スピンとバランスのオリジナルTバージョンという棲み分けができます。
おすすめのプレースタイルと組み合わせ
オリジナルTバージョンは、その特性から以下のようなプレースタイルの選手に特におすすめです。
- 前陣速攻型:台の近くでピッチの速いラリーを展開し、スマッシュやミート打ちを多用する選手。ラバーの速い球離れと直線的な弾道が、このスタイルを強力にサポートします。
- 異質攻撃型:バック面に表ソフトを使用し、ブロックでの変化と攻撃を両立させたい選手。安定したブロックと鋭いカウンターが可能です。
- ドライブ主戦型のバックハンド:フォアは裏ソフトでドライブを主体としつつ、バックハンドでは変化とスピードを求める選手にも適しています。実際に「フォア:テナジー、バック:オリジナルTバージョン」といった組み合わせは、バランスが良い選択肢として知られています。
購入ガイド:Amazonで入手可能なモデル
ヤサカ オリジナルTバージョンは、現在も卓球用品店やオンラインストアで安定して供給されています。特にAmazonでは、様々な厚さのモデルを簡単に見つけることができます。
購入時には、色(赤・黒)とスポンジの厚さを選択する必要があります。厚さは主に以下の4種類が展開されています。
- 特厚 (MAX): 最も弾みが強く、威力を最大限に引き出したい攻撃型選手向け。
- 厚 (2.0mm): 威力と安定性のバランスが取れた、最も標準的な厚さ。
- 中 (1.5mm): コントロール性能と安定性が向上し、ブロックや守備技術を重視する選手向け。
- 薄 (1.3mm): 最もコントロールしやすく、ナックルなどの変化も出しやすい。
自分のプレースタイルや求める性能に合わせて、最適な厚さを選ぶことが重要です。
まとめ
ヤサカ「オリジナルTバージョン」は、単なる古いラバーではなく、スピード、コントロール、そして適度なスピン性能を高次元で融合させた、時代を超えた名作です。その特徴をまとめると以下のようになります。
- 攻撃的なスピード性能:硬いシートと高弾性スポンジが生み出す鋭い弾道。
- 優れたコントロール:攻撃的ながらも安定したブロックとミート打ちが可能。
- バランスの取れた性能:自分から回転をかけることも、ナックルで変化をつけることもできる万能性。
- 扱いやすさ:表ソフトラバーの中では比較的ユーザーフレンドリーで、中級者にもおすすめ。
テンションラバーが主流の現代においても、その独特の打球感と信頼性から根強い人気を誇ります。前陣での速い卓球を目指すプレイヤーや、バックハンドに安定と変化を求めるプレイヤーにとって、オリジナルTバージョンは今なお検討する価値のある、非常に優れた選択肢と言えるでしょう。




