はじめに:LA五輪新種目の前哨戦、成都の熱戦
2025年11月30日から12月7日にかけて、中国・成都で「ITTF混合団体ワールドカップ2025」が開催されています。この大会は、2028年ロサンゼルスオリンピックで新たに採用される卓球の男女混合団体種目の行方を占う重要な前哨戦として、世界中から大きな注目を集めています。国際オリンピック委員会(IOC)がLA2028の実施種目として決定したことで、各国ともこの新しいフォーマットへの対応を急いでおり、今大会にはトップ選手を揃えた強力な布陣で臨んでいます。
大会は、男女各4名で構成される16チームが参加。試合は、混合ダブルス、女子シングルス、男子シングルス、そして女子または男子ダブルスと続き、先に合計8ゲームを獲得したチームが勝利となるユニークな形式です。このルールは、個々の選手の実力だけでなく、チーム全体の層の厚さと戦略が勝敗を大きく左右することを意味します。本稿では、日本のエースとしてチームを牽引する早田ひな選手の活躍を中心に、大会の模様と今後の展望を深く掘り下げていきます。
日本のエース・早田ひな:パリ五輪の試練を乗り越え、完全復活へ
今大会、日本女子チームのエースとして期待を一身に背負うのが早田ひな選手です。2000年7月7日生まれ、日本生命に所属する彼女は、2024年12月時点の世界ランキングで日本勢トップクラスに位置し、名実とも日本の顔として活躍しています。2024年のパリ五輪では、女子シングルスで銅メダル、団体で銀メダルを獲得するなど、輝かしい成績を収めました。
圧倒的なパワーと戦術眼:早田ひなのプレースタイル
早田選手の最大の武器は、167cmの恵まれた体格から放たれる破壊力抜群のパワードライブです。特にフォアハンドは一撃でラリーを終わらせる威力を持ち、後陣からのダイナミックな攻撃は多くの観客を魅了します。また、近年はバックハンド技術の向上も著しく、特に「チキータ」からの連打は彼女の代名詞となっています。
さらに、彼女は本来右利きでありながら、幼少期に指導者の勧めでサウスポーに転向したという経歴を持ちます。卓球において左利きは、サービスの回転が逆になるなど相手にとって対応が難しく、大きなアドバンテージとなります。パワーだけでなく、戦術的な引き出しの多さも彼女の強さの源泉です。
2024年パリ五輪での負傷と復活への道のり
パリ五輪でのメダル獲得は輝かしい功績でしたが、その裏で早田選手は大きな試練に直面していました。女子シングルス準々決勝で、利き手の左手首を負傷(尺側手根伸筋腱の亜脱臼と診断)。痛み止めを服用しながら戦い抜き、銅メダルを獲得したものの、その後のキャリアに大きな影響を及ぼしました。
復帰後しばらくは、彼女の武器であるバックハンドを全力で振り抜けない状態が続きました。卓球選手にとって手首は、サーブの回転量やバックハンドの「しなり」を生み出す生命線です。この代名詞ともいえる技術を封じられた中での戦いは、相当なストレスだったと推察されます。しかし、彼女は地道なリハビリとトレーニングを重ね、徐々に本来のパフォーマンスを取り戻し、今大会では完全復活を印象付けるプレーを見せています。
混合団体W杯2025:早田ひなの戦いの軌跡
今大会、早田選手は混合ダブルスと女子ダブルスの両方で起用され、日本の快進撃に大きく貢献しています。特に、試合の流れを左右する第1試合の混合ダブルスを任されることが多く、エースとしての信頼の厚さがうかがえます。
ステージ1:安定した力でチームを牽引
日本はグループ2でインド、オーストラリア、クロアチアと同組になりました。早田選手は全試合に出場し、チームの3連勝、首位通過に貢献しました。
- 11月30日 vs オーストラリア (8-1 勝利): 第1試合の混合ダブルスに戸上隼輔選手と出場。3-0のストレートで快勝し、チームに勢いをつけました。
- 12月1日 vs インド (8-4 勝利): シングルスで苦戦を強いられる中、第4試合の女子ダブルスに伊藤美誠選手と出場。3-0のストレート勝ちで日本の勝利を決定づけました。
- 12月2日 vs クロアチア (8-2 勝利): 再び戸上選手との混合ダブルスで先陣を切り、2-1で勝利。チームのステージ1全勝に貢献しました。
ステージ2:強豪との連戦で見せるエースの風格
ステージ1を突破した8チームによる総当たり戦となるステージ2。日本は香港、ドイツ、スウェーデン、韓国といった強豪相手に連勝を続けています。早田選手も重要な場面で起用され、期待に応える活躍を見せています。
- 12月3日 vs 香港 (8-2 勝利): 第4試合の女子ダブルスに張本美和選手と出場。チームの勝利を決める8ゲーム目を奪い、1-0で勝利しました。
- 12月4日 vs スウェーデン (8-0 勝利): 戸上選手との混合ダブルスで出場し、3-0の完勝。チームの圧勝劇の口火を切りました。
- 12月5日 vs 韓国 (8-2 勝利): 強敵・韓国との一戦でも、第1試合の混合ダブルスに戸上選手と出場。第1ゲームを落とすも逆転で2-1と勝利し、チームに貴重なリードをもたらしました。
最強布陣で挑む日本代表と今後の展望
今大会、日本は男女ともに世界トップクラスの選手を揃えた「最強布陣」で臨んでいます。男子は張本智和選手、戸上隼輔選手、松島輝空選手、篠塚大登選手。女子は早田ひな選手、張本美和選手、伊藤美誠選手、大藤沙月選手という豪華なメンバーです。この層の厚さが、ステージ2での連勝を支えています。
優勝への鍵を握る大一番:中国戦
本日12月6日、日本はステージ2の最終戦で卓球王国・中国と対戦します。中国は今大会も圧倒的な強さを見せつけており、3戦全勝で1ゲームしか落とさないなど盤石の態勢です。日本、中国、韓国、ドイツが無敗でステージ2に進んでおり、この直接対決が事実上の決勝前哨戦となる可能性があります。
日本が悲願の初優勝を果たすためには、中国の高い壁を越えなければなりません。早田選手が混合ダブルスや女子ダブルスでどのようなパフォーマンスを見せるか、そしてチーム全体でいかにして8ゲームを先取するかの戦略が最大の焦点となります。
最終日のメダルマッチへ
ステージ2の上位4チームが、最終日12月7日のファイナルステージ(準決勝・3位決定戦・決勝)に進出します。日本はすでに無敗で快進撃を続けており、ファイナルステージ進出は確実視されています。準決勝は午前7時30分(日本時間)から、決勝は午後4時30分(日本時間)から行われる予定です。パリ五輪の雪辱を果たし、新種目で世界の頂点に立つことができるか、日本チームの最後の戦いから目が離せません。
観戦ガイド:テレビ放送・ネット配信情報
ITTF混合団体ワールドカップ2025の熱戦は、日本国内でも視聴可能です。早田ひな選手と日本代表の活躍をリアルタイムで応援しましょう。
- 地上波テレビ: テレビ東京系列で連日、ゴールデンタイムを中心に放送されています。12月6日は夜6時30分から、最終日の12月7日も夜6時30分から放送予定です。
- インターネット配信:
- U-NEXT: 日本戦全試合を独占LIVE配信しています。
- YouTube テレ東卓球チャンネル: 日本戦や決勝以外の注目試合を配信しています。
- ITTF World YouTube Channel: 海外向けの公式配信も行われています。
詳細な放送・配信スケジュールは、各公式サイトでご確認ください。




