はじめに：五輪新種目を見据える戦い
2025年11月30日から中国・成都で開催されている「ITTF混合団体ワールドカップ2025」。卓球界の新たな潮流として注目されるこの大会は、2028年ロサンゼルス五輪で正式種目となることが決定しており、各国が覇権を争う重要な前哨戦と位置づけられています。日本は張本智和、早田ひなをはじめとする男女のトップ選手を揃えた「最強メンバー」で臨み、快進撃を続けています。その中心で、ひときわ強い輝きを放っているのが、18歳の松島輝空（木下グループ）です。今大会での彼の目覚ましい活躍は、日本チームの躍進を支えるだけでなく、次世代エースとしての地位を確固たるものにしています。
ITTF混合団体ワールドカップとは？
ITTFワールドカップは、1980年に始まった歴史ある大会ですが、2023年に男女混合団体戦という全く新しいフォーマットで生まれ変わりました。国際オリンピック委員会（IOC）が男女混合種目を重視する流れを受け、卓球界でもチームワークと男女の総合力が問われるこの形式が導入されたのです。。今年で3回目を迎えるこの大会は、五輪新種目としての採用決定後、初の開催となり、各国の本気度がこれまで以上に高まっています。
革新的な「8ゲーム先取」ルール
混合団体W杯の最大の特徴は、そのユニークな試合形式にあります。試合は以下の順番で行われ、各マッチは3ゲーム制（3-0または2-1）で、チーム全体で先に合計8ゲームを獲得した方が勝利となります。
- 混合ダブルス
- 女子シングルス
- 男子シングルス
- 女子ダブルス または 男子ダブルス
- 男子ダブルス または 女子ダブルス
このルールにより、1試合ごとの勝敗だけでなく、1ゲームの重みが非常に大きくなります。たとえ試合に敗れても1ゲームでも多く獲得することがチームの勝利に繋がり、最後まで気の抜けない展開が続くのが魅力です。。
過去大会と日本の挑戦
日本は、新フォーマット初開催の2023年大会で3位に入賞。しかし、若手主体で臨んだ2024年大会では、第2ステージで敗退し5位という悔しい結果に終わりました。。五輪種目となった今大会、過去の雪辱を果たすべく、張本智和、戸上隼輔、松島輝空、篠塚大登、早田ひな、伊藤美誠、張本美和、大藤沙月という、現在の日本卓球界が誇る最強の布陣で頂点を目指しています。
新エースの覚醒：松島輝空の軌跡
今大会で日本の躍進を力強く牽引する松島輝空。2007年4月29日生まれの18歳は、幼少期からその才能を開花させ、常に注目を集めてきました。。かつては「張本2世」とも称されましたが、今や唯一無二のプレースタイルと実績で、世界トップクラスの選手へと成長を遂げています。
「張本2世」から唯一無二の存在へ
小学生時代に全日本選手権ホープス・カブ・バンビの部で6連覇を達成するなど、早くから頭角を現した松島。2025年に入りその成長はさらに加速します。1月の全日本卓球選手権では、決勝で篠塚大登を破り、男子シングルスで悲願の初優勝。さらに国際舞台でもWTTコンテンダー太原やWTTチャンピオンズフランクフルトで優勝を飾るなど、驚異的なスピードで実績を積み上げています。。世界ランキングもトップ10入りを果たし、名実とも日本の新エースとして期待されています。
小柄な体躯から放たれる多彩な攻撃
松島のプレースタイルは左シェーク裏裏の攻撃型。身長は比較的小柄ながら、それを補って余りあるパワフルな両ハンドドライブと、相手の意表を突く巧みなコース取りが最大の武器です。特に、正確無比なバックハンドと鋭いカウンターは、世界のトップ選手をも苦しめます。。今大会でも、その勝負強さと技術の高さが随所で光っています。
2025年大会での圧巻のパフォーマンス
今大会、日本はステージ1を3戦全勝で危なげなく突破。そして、強豪が集うステージ2でも連勝を重ね、無敗を維持しています（2025年12月5日時点）。この快進撃において、松島輝空の貢献度は計り知れません。
ステージ1：試練と適応
ステージ1のインド戦では、男子シングルスでマナフ・タッカーに1-2で敗れるという試練も経験しました。。しかし、この敗戦を糧に、彼はすぐに適応。続く試合では、より一層研ぎ澄まされたプレーを見せることになります。
ステージ2：日本の快進撃を牽引
ステージ2に入ると、松島のパフォーマンスはさらにギアを上げます。
- 香港戦（12月3日）：初戦の混合ダブルスで大藤沙月とペアを組み出場。最終ゲームが7度ものデュースにもつれる大接戦の末、18-16で勝利。この1勝がチームに勢いをもたらし、8-2の快勝に繋がりました。試合後、松島は「常に負けるんじゃないかと思いながら戦っていた」と本音を漏らし、極限のプレッシャーの中での勝利だったことを明かしました。
- ドイツ戦（12月4日）：混合ダブルスで再び大藤と組んで2-1で勝利すると、男子ダブルスでは戸上隼輔と組み2-0で勝利。チームの勝利（8-3）に大きく貢献しました。
- 韓国戦（12月5日）：事実上の準決勝進出をかけた大一番。日本のゲームカウント4-2で迎えた第3試合の男子シングルスで、アン・ジェヒョンと対戦。松島は圧巻のプレーで3-0のストレート勝ちを収め、日本の勝利を決定づけました。この勝利でチームスコアを7-2とし、日本の無敗記録を継続させる立役者となりました。
混合ダブルスでの勝負強さ、そしてエース級の選手が相手となる男子シングルスでの完勝。松島は今大会、出場した全ての試合でチームの勝利に直結する活躍を見せています。
結論：最強布陣で狙う頂点、松島輝空が拓く未来
ITTF混合団体ワールドカップ2025は、12月6日に最大のライバルである中国との大一番を迎えます。ここまで無敗で勝ち進んできた日本にとって、優勝を占う上で最も重要な試合となるでしょう。その中で、18歳の松島輝空が見せる堂々たるプレーは、日本チームに欠かせない得点源となっています。
彼の活躍は、単なる一大会の好成績にとどまりません。2028年ロサンゼルス五輪の新種目「混合団体」において、日本が金メダルを獲得するための重要な鍵を握る存在であることを証明しています。プレッシャーのかかる場面での勝負強さ、そして急造ペアでも結果を出す適応能力は、まさに団体戦のエースたる資質です。日本の快進撃はどこまで続くのか、そして松島輝空はどこまで高みに上り詰めるのか。彼の挑戦から目が離せません。
