ラージボール卓球において、ラバー選びは勝敗を左右する重要な要素です。数ある製品の中でも、バタフライの「ラージストーム スピン」は、その名の通りスピン性能に特化し、多くのプレイヤーから支持を集めています。本記事では、このラバーの基本スペックから核心技術、他のラバーとの比較、そして実際のユーザーレビューまでを深く掘り下げ、その魅力と実力を徹底的に解説します。
ラージストーム スピンは、ラージボールに求められるスピードとスピンの両方を「ハイテンション技術」によって大きく向上させたラバーです。特にスピン性能に優れ、ドライブを多用する選手や安定性を重視する選手に最適な選択肢となります。
ラージストーム スピンの基本スペック
まず、ラージストーム スピンの基本的な性能を見ていきましょう。これらの数値は、バタフライ社がラージボール専用に設定した独自の指標に基づいています。
- 製品名: ラージストーム スピン (LARGESTORM SPIN)
- 製品コード: 00390
- カテゴリ: ラージ用ハイテンション・表ソフトラバー
- スピード: 13
- スピン: 11.5
- スポンジ硬度: 20
- スポンジ厚: 2.3mm (ラージ超トク), 2.1mm (ラージトクアツ), 1.9mm (ラージアツ)
- カラー: レッド, ブラック
- 原産国: 日本
- 価格: 5,500円(税込・メーカー希望小売価格)
特筆すべきは、スポンジ硬度「20」という非常に柔らかい設定です。これは後述するスピン性能とコントロールのしやすさに大きく貢献しています。また、スピードとスピンのバランスが取れた数値設定も特徴です。
核心技術:ハイテンション・テクノロジー
ラージストーム スピンの性能を支えるのが、バタフライ独自の「ハイテンション・テクノロジー」です。この技術は、ラバーの分子そのものにテンション(張り)を与えることで、ゴムの反発弾性を極限まで高めるものです。
具体的には、ボールがラバーに当たった際のエネルギーロスを最小限に抑え、そのエネルギーを効率的にボールのスピードと回転に変換します。これにより、ラージストーム スピンは、従来のラバーでは難しかった「高いスピン性能」と「十分なスピード」の両立を実現しています。メーカーは、「数十種の候補の中から、安定性を維持しつつスピード性能に優れたツブ形状のシートを採用」したと説明しており、この技術がラバーの性能を根底から支えていることがわかります。
性能分析:スピンと安定性の両立
ラージストーム スピンの最大の魅力は、その卓越したスピン性能と、それを支える安定性にあります。ここでは、その性能を3つの側面から分析します。
卓越したスピン性能
製品名が示す通り、このラバーの最大の武器はスピンです。バタフライの公式指標で「11.5」という高いスピン値は、ラージボールでも強力な回転をかけたドライブを可能にします。これは、ボールとの接触面積を大きくし、回転をかけやすくするシート設計によるものです。
ユーザーレビューでも「回転性能に優れ、ラージでもドライブを打ちたい選手におすすめ」という声が多く、特にトップスピンやサーブでその威力を発揮します。
スピードとコントロールの絶妙なバランス
スピン性能が高い一方で、スピードも「13」と十分な数値を確保しています。しかし、このラバーの真価は単なるスピードではなく、コントロール性とのバランスにあります。あるレビュワーは「回転と飛びすぎない性能を重視する方にはおすすめ」と評価しており、これはハイテンションラバーでありながらも、ボールが暴発しにくく、狙ったコースに安定して打ち込めることを示唆しています。
この「飛びすぎない」感覚は、特にラリー戦での安定性を求めるプレイヤーにとって大きなメリットとなります。自分でパワーをコントロールし、回転量の変化で相手を揺さぶる戦術的なプレーが可能になります。
回転を生み出す「柔らかいスポンジ」と「ツブ形状シート」
高いスピン性能の秘密は、スポンジとシートの組み合わせにあります。スポンジ硬度「20」という非常に柔らかいスポンジは、ボールが食い込みやすく、インパクトの瞬間にボールを掴む時間を長くします。これにより、プレイヤーは回転をかけやすくなります。
さらに、バタフライが選び抜いた「安定性を維持しつつスピード性能に優れたツブ形状のシート」が、この柔らかいスポンジと組み合わさることで、ボールに強烈な回転を与えつつ、安定した弾道を実現します。この絶妙なコンビネーションこそが、ラージストーム スピンの性能の核心と言えるでしょう。
他のラバーとの比較
ラージストーム スピンの立ち位置をより明確にするため、他の代表的なラバーと比較してみましょう。
兄弟ラバー「ラージストーム スピード」との違い
同じ「ラージストーム」シリーズには、「ラージストーム スピード」という製品が存在します。名前の通り、こちらはスピード性能をより重視したモデルです。公式ではありませんが、一部の資料ではスピード値が「13.5」とされており、スピンよりも速さを求めるプレイヤー向けの設計となっています。
プレースタイルに応じて、回転で試合を組み立てるなら「スピン」、速さで押し切りたいなら「スピード」と、明確な選択が可能です。
対極の存在?「DHS 狂飚3 Neo」との比較
全く異なるタイプのラバーとして、中国の粘着性ラバーの代表格である「DHS 狂飚3 Neo(キョウヒョウ3 ネオ)」と比較してみます。この比較から、テンション系表ソフトと粘着性裏ソフトの特性の違いが浮き彫りになります。
- 打球感とスピード: ラージストーム スピンはハイテンション技術により、軽いインパクトでもボールが弾む感覚があります。一方、狂飚3 Neoは粘着性のトップシートと硬いスポンジが特徴で、「自分のスイングスピードがそのままボールの速さになる」と評されます。つまり、速いボールを打つには相応のパワーと技術が必要です。
- スピンのかけ方: ラージストーム スピンはスポンジに食い込ませて回転をかけるのに対し、狂飚3 Neoはシート表面の粘着力でボールを「擦って」強烈な回転を生み出します。これは特にサーブやショートゲームで絶大な威力を発揮します。
- 重量: 一般的に、狂飚シリーズはラバー重量が重い傾向にあります。あるレビューではカット後の重量が47g〜50g程度と報告されており、ラケット全体のバランスに影響を与えます。ラージストーム スピンは表ソフトであり、比較的軽量な部類に入ります。
- プレースタイル: ラージストーム スピンは安定したラリーとドライブで得点するオールラウンドなスタイルに向いています。対して狂飚3 Neoは、強力なループドライブと台上技術を武器とする、より専門的でパワーを要するプレースタイルに適しています。
このように、両者は性能特性が大きく異なり、ラバー選びがプレースタイルそのものを規定することを示しています。
ユーザーレビューから見るリアルな評価
公式サイトのスペックだけでなく、実際に使用したプレイヤーの声は非常に参考になります。様々なレビューサイトから、ラージストーム スピンのリアルな評価を集めてみました。
「バタフライから出ているラージボール用ラバーで、他のメーカーのものが全国上位者のユーザーも多い実態はありますが、回転と飛びすぎない性能を重視する方にはおすすめのラバーです。」
— レビュワー: Takashi氏 (卓球歴16年)
「40mmから移行してそのままの感覚でやりたい方はラバーがそのままだとやはり違和感があると思いますのでこのラバーを使うことをお勧めします。感覚が40mmに近いです!」
— レビュワー
これらのレビューから、以下の点が共通の評価として挙げられます。
- 高いコントロール性能: 「飛びすぎない」という評価は、意図した通りのボールを打ちやすいことを意味します。
- 優れたスピン性能: 製品名通り、回転のかけやすさが高く評価されています。
- 40mmボールからの移行のしやすさ: 硬式卓球からの移行者にとっても馴染みやすい打球感であることが示唆されています。
- 安定性重視のプレイヤーに最適: スピードで圧倒するよりも、安定したラリーで試合を組み立てたい選手に強く推奨されています。
結論:ラージストーム スピンはどんな選手におすすめか?
本記事での分析を総合すると、バタフライの「ラージストーム スピン」は以下のような選手に最適なラバーと言えます。
- スピン主体の攻撃をしたい選手: ラージボールでも回転量の多いドライブで得点したいプレイヤー。
- 安定したラリーを重視する選手: 暴発しにくいコントロール性能を活かし、ミスを減らして着実に試合を運びたいプレイヤー。
- 硬式卓球からの移行者: 40mmボールに近い感覚でプレーしたいと考えているラージボール初心者・中級者。
- 技術の幅を広げたい選手: 柔らかいスポンジでボールを掴む感覚を養い、回転をかける技術を向上させたいプレイヤー。
ラージストーム スピンは、単なるスピン特化ラバーではなく、スピード、コントロール、そして安定性という要素を高次元で融合させた、非常にバランスの取れた製品です。自分のプレースタイルと照らし合わせ、ラバー選びの一助としていただければ幸いです。




