ニッタクの「ハモンド」シリーズは、20年以上にわたり卓球界で愛され続けるラバーの代名詞です。初代の登場から、時代の変化と共に進化を遂げ、2022年には待望の新作「ハモンドZ2」がリリースされ、再びトップシーンの注目を集めています。本記事では、ハモンドシリーズの輝かしい歴史から、最新作Z2の性能、そしてあなたのプレースタイルに最適な一枚を見つけるための選び方まで、網羅的に解説します。
ハモンドは、IE(エネルギー集約型)ラバーの第一弾として2001年に登場し、軽さと弾みの良さで瞬く間にベストセラーとなりました。スピードグルー全盛期にはその効果の高さでも人気を博し、世界トップ層から中級者まで幅広く使用されました。
ハモンドシリーズとは:時代を築いた名作ラバーの軌跡
ハモンドシリーズの歴史は、卓球用具の技術革新の歴史そのものです。2001年、ニッタクは天然ゴムと合成ゴムを配合した「IE(エネルギー集約型)技術」を搭載した初代「ハモンド」を発売しました。これは、ボールが40mmに変更され、より弾むラバーが求められたタイミングと合致し、その優れたスピード性能とコントロールのバランスで一世を風靡しました。
その後、よりハードなスポンジで威力を高めた「ハモンドプロα」、弾みを極限まで追求した「ハモンドX」、そしてスピードグルー禁止後の時代に対応した「ハモンドプロβ」など、常にプレイヤーのニーズに応える製品をリリースし続けてきました。そして2022年、13年ぶりの新作として登場したのが「ハモンドZ2」です。現代卓球の主流であるカウンタースタイルに最適化されたこのラバーは、シリーズの新たなフラッグシップとして、その存在感を確固たるものにしています。
【主力製品】ハモンドZ2 徹底解剖
「ハモンドZ2」は、シリーズの伝統である爽快な打球感を継承しつつ、現代のトッププレイヤーが求める圧倒的なパワーとスピン性能を追求して開発されました。その性能は、多くのレビューでButterfly社のDignicsシリーズやTenergyシリーズと比較されるほど高く評価されています。
コンセプト:「落としてたまるか。」が示す性能
ハモンドZ2のキャッチコピーは「落としてたまるか。」。これは、現代卓球で重要視されるカウンターや、台から下がっての引き合いでも、ボールを滑らせることなく確実に掴み、相手コート深くに突き刺すという強い意志を表しています。多くのユーザーレビューでも「薄く捉えてもボールが落ちない」「ネットを越えてから失速しないドライブが打てる」といった声が寄せられており、このコンセプトが見事に体現されていることがわかります。
核心技術:バルクヘッドスポンジとナチュラルリッチシート
ハモンドZ2の驚異的な性能は、2つの革新的な技術によって支えられています。
- バルクヘッドスポンジ:ニッタクを象徴する“赤”をまとった新開発のスポンジ。独立気泡の隔壁が強く、打球時のエネルギーロスを最小限に抑え、反発力を極限まで強化します。これにより、ボールに強烈なスピードとパワーを与えることが可能になりました。
- ナチュラルリッチシート:天然ゴムの配合率を高め、シートのゴム密度を大きくしたトップシート。ボールを「噛む」ような強烈なグリップ力を持ち、薄く捉えた打球でも滑らずに強烈な回転を生み出します。このシートのおかげで、相手の回転に影響されにくい安定したブロックやカウンターが可能になります。
性能評価:スピード・スピン・コントロールの三位一体
ハモンドZ2は、ニッタクの公式性能値でスピード「16.00」、スピン「13.00」という、同社ラバーの中で最高クラスの数値を誇ります。スポンジ硬度は「40.0」と表記されていますが、多くのレビューではドイツ基準(ESN)で45度〜50度前後のハードなラバーと評価されています。
この硬いスポンジとグリップ力の強いシートの組み合わせにより、強打時には爆発的な威力を発揮する一方、繊細なタッチが求められる台上プレーでは、比較的弾みが抑えられコントロールしやすいという二面性を持っています。特に、相手の強打に対するカウンタードライブでは、回転に負けずに安定してスピンをかけ返すことができ、試合を優位に進める大きな武器となります。
得意なプレーと適合するプレースタイル
ハモンドZ2は、その特性からスピンとパワーを重視する攻撃型プレイヤーに最適なラバーです。特に以下のようなプレースタイルの選手に強く推奨されます。
- ループドライブ主戦型:強烈な回転量で相手を崩し、決定打を狙う選手。特にフォアハンドでの使用でその真価を発揮します。
- カウンター重視の現代卓球スタイル:前〜中陣で相手のドライブに打ち負けず、より質の高いボールで反撃したい選手。
- 中〜後陣での引き合いを得意とする選手:台から離れても失速しない、威力のあるドライブでラリーを制したい選手。
一方で、その性能を最大限に引き出すには、ある程度のスイングスピードと正確なインパクトが求められるため、基礎技術を習得中の中級者や、コントロールを最優先するプレイヤーには、やや扱いにくい側面もあります。
シリーズ各製品の比較と選び方
ハモンドシリーズには、Z2以外にも個性豊かなラインナップが存在します。自分のプレースタイルに合った一枚を選ぶために、各製品の特徴を比較してみましょう。
プレースタイル別・最適なハモンドはこれだ!
どのハモンドを選ぶべきか、プレースタイル別にまとめました。
- 威力重視のループ主戦型:迷わずハモンドZ2を選びましょう。その圧倒的な回転量とスピードが、あなたの決定力を一段階引き上げます。特にフォアハンドでの使用がおすすめです。
- 安定志向のオールラウンダー:攻守のバランスを重視するなら初代ハモンド(無印)が最適です。癖がなく扱いやすいため、どんな場面でも安定したプレーをサポートします。バックハンドにも適しています。
- パワーと安定を両立したい欲張りなあなたへ:攻撃的なプレーをしたいけれど、Z2は難しそう…と感じるならハモンドPowerが答えです。適度な硬さと弾みで、安定感を損なわずに威力をプラスできます。
- 前陣での超攻撃型:ピッチの速いラリーで相手を圧倒したいなら表ソフトのハモンドFAです。スマッシュやミート打ちのスピードは特筆もので、相手に時間を与えません。
ハモンドZ2 vs 主要競合ラバー
ハモンドZ2は、市場に存在する他のトップ性能ラバーとどのように異なるのでしょうか。特に頻繁に比較される2つのラバーとの違いを見ていきましょう。
vs. Butterfly Tenergy/Dignics シリーズ
ハモンドZ2は、しばしば「Dignics 05の廉価版」や「Tenergy 05に近い性能」と評されます。これは、硬めのスポンジとグリップの強いシートが生み出す「ボールを掴んで飛ばす」感覚が似ているためです。しかし、細かく見ると違いがあります。
- 対Dignics 05:Dignics 05の方がより強い弧線を描き、回転量もわずかに上回るとの評価が多いです。一方、ハモンドZ2はより直線的な弾道でスピード感があり、価格面で優位性があります。
- 対Tenergy 05:Tenergy 05は独特の弾力と球持ちで多くのプレイヤーに愛されていますが、ハモンドZ2はそれよりも相手の回転の影響を受けにくく、ブロックやカウンターが安定しやすいという特徴があります。また、Z2の方が硬質な打球感を持つと感じるプレイヤーが多いようです。
あるユーザーは「Tenergy 05とDignics 05の中間のようなラバー。T05より弾道が低く、コントロールが良い」と評価しています。
vs. Nittaku Fastarc G-1
同じニッタクのベストセラーラバー「ファスタークG-1」との比較も重要です。G-1はバランスの取れた優等生ラバーとして絶大な人気を誇ります。
ハモンドZ2とファスタークG-1は、ニッタクの日本製ラバーの双璧をなす存在です。
G-1がより柔らかく、ボールを掴む感覚が強いため、安定感とコントロール性能に優れています。万人向けの性能で、幅広い層のプレイヤーにマッチします。
対してハモンドZ2は、より硬く、弾みが強いため、最大値のスピードとスピン性能でG-1を上回ります。フラットなミート打ちやカウンタードライブではZ2に軍配が上がりますが、その分、G-1よりもプレイヤーの技術が要求される傾向にあります。
簡単に言えば、「安定とバランスのG-1、威力とスピードのZ2」という棲み分けが可能です。
結論:あなたにとっての「ハモンド」とは
ニッタクのハモンドシリーズは、単なる卓球ラバーのブランドではありません。それは、時代の要求に応えながら進化を続けてきた、技術と情熱の結晶です。クラシックなバランスを求めるなら初代「ハモンド」、絶対的な威力を追求するなら「ハモンドZ2」、その中間で安定したパワーを求めるなら「ハモンドPower」、そして前陣速攻のスペシャリストには「ハモンドFA」と、多様な選択肢が用意されています。
特に最新作「ハモンドZ2」は、現代卓球のトレンドを見事に捉え、トッププレイヤーも満足させるポテンシャルを秘めた傑作です。自分のプレースタイルと目指す卓球を明確にし、この記事を参考に、あなたにとって最高のパートナーとなる「ハモンド」を見つけてください。




