フライアット EVOとは?
ニッタク(Nittaku)が2025年春夏の注目作として市場に投入した「フライアット EVO(Flyatt EVO)」は、人気の「フライアット」シリーズをスピード性能コンセプトに進化させた裏ソフトラバーです。品番はNR-8122。
「爽快な打球音」をキャッチコピーに、グリップ力のある天然ゴムシートと弾力性の高いスポンジを組み合わせることで、特にフラット打ちやミート打ちでの速いピッチのプレーをサポートします。このラバーは、単にスピードを追求するだけでなく、優れた扱いやすさも両立しており、幅広い層のプレイヤーから注目を集めています。
フライアット EVOのコンセプト: スピードが進化したフライアット。グリップ力のあるシートと高弾力スポンジにより、軽い打球でも爽快な打球音とともにスピードがアップ。フラット打ちやミート打ちで先手を取り、ピッチの速いプレーを目指す選手に最適です。
フライアット EVOの性能を数値で見る
ラバーの性能を客観的に把握するため、まずは公式発表されている数値を分析します。フライアット EVOは、スピードとスピン、そして柔らかいスポンジ硬度のバランスが特徴です。
公式性能値と競合ラバーとの比較
ニッタク公式によると、フライアット EVOの性能値は以下の通りです。
- スピード: 15.25
- スピン: 11.50
- スポンジ硬度: 30.0(日本基準)
特筆すべきはスポンジ硬度30.0という柔らかさです。これによりボールがラバーに食い込みやすくなり、コントロール性能と安定性の向上に寄与します。一部海外サイトでは「40°」と表記されていますが、これはヨーロッパ基準(ESN)での換算値と考えられ、いずれにせよ柔らかめのテンションラバーに分類されます。
下のグラフは、フライアット EVOと、市場で人気の高い中級者向けラバー「バタフライ ロゼナ」および「ニッタク ファスタークG-1」の公式性能値を比較したものです。フライアット EVOは、ファスタークG-1に比べてスピードで勝り、スピンでは若干劣るものの、ロゼナと比較するとよりスピード志向の性能バランスであることがわかります。
フライアットシリーズ内での位置づけ
フライアットシリーズには、スピン重視の「フライアット スピン」、コントロール重視の「フライアット ソフト」など、異なる特徴を持つラバーが存在します。EVOは、その中で最もスピード性能を強化したモデルとして位置づけられています。
右のグラフはシリーズ内の性能を比較したものです。「フライアット スピン」がスピン性能で優れている一方、「フライアット EVO」はスピードで他を圧倒しています。硬度30.0という柔らかいスポンジは「フライアット ソフト」と同等でありながら、スピード性能を大幅に向上させている点がEVOの最大の特徴と言えるでしょう。
フライアット EVOの核心技術と2つの特徴
フライアット EVOの優れた性能は、ニッタク独自の技術と素材の組み合わせによって実現されています。ここでは、その核心となる2つの特徴を深掘りします。
特徴①:軽打でも加速する「高弾力スポンジ」
フライアット EVOの最大の特徴の一つが、「軽く打ってもよく弾む」高弾力スポンジです。硬度30.0という柔らかいスポンジは、インパクトの瞬間にボールを深く食い込ませ、スポンジ自体の反発力でボールを力強く弾き出します。
これにより、フルスイングが難しい体勢からでも、またパワーに自信がない選手でも、 상대コートに深く突き刺さるスピードボールを放つことが可能です。特に、コンパクトなスイングが求められるバックハンドや、ラリー戦での素早い切り返しにおいて、この特性は大きな武器となります。
特徴②:ボールを掴む「天然ゴムシート」と「AC技術」
スピード性能を追求しつつも、スピンとコントロールを疎かにしていないのがフライアット EVOのもう一つの魅力です。その鍵を握るのが、グリップ力に優れた天然ゴムシートと、ニッタク独自の「アクティブチャージ(AC)」技術です。
アクティブチャージ(AC)とは:ゴム本来の弾力性を最大限に引き出し、ラバーの表面(シート)とスポンジを化学的に張り詰めた状態(テンション)にする技術。ボールがラバーに食い込むことで強い回転がかかり、相手の球威に負けずに弾き返すことができます。
天然ゴム由来のシートはボールをしっかりと掴む(引っかける)感覚をもたらし、AC技術によって増幅されたテンションが、そのボールをスピーディーに射出します。これにより、ただ速いだけでなく、回転のかかった質の高いドライブや、安定したブロックが可能になります。フラットに叩けばスピードが出て、擦れば回転がかかるという、現代卓球に求められる万能性を高いレベルで実現しています。
フライアット EVOはどんなプレイヤーに向いているか?
フライアット EVOの性能特性から、特に以下のようなプレイヤーに最適なラバーと言えます。
プレイヤータイプ①:ステップアップを目指す初〜中級者
「基本技術は一通り覚えたけれど、もっと威力が欲しい」「次のレベルに進むための一枚を探している」といった初級者から中級者への過渡期にいる選手に最適です。柔らかいスポンジがボールを持つ感覚を養い、ミート打ちやドライブの基本技術を安定して習得するのに役立ちます。使用者レビューでも「上達過程での2枚目のラバーとして最適」との声が多く見られます。
プレイヤータイプ②:安定性を求めるバックハンド主戦の選手
フライアット EVOは、多くのレビューでバック面での使用に高い評価を得ています。 柔らかさと弾みのバランスが良く、コンパクトなスイングでも安定したバックドライブやミート打ちが可能です。相手の強打に対しても食い込みの良さがクッションとなり、ブロックが安定しやすいのも利点です。フォア面にはより硬く、回転量の多いラバーを貼り、バック面で安定感とスピードを両立させたい選手にとって、非常に魅力的な選択肢となります。
プレイヤータイプ③:パワーに自信のないジュニア・レディース選手
スイングスピードがまだ速くないジュニア選手や、筋力でボールを飛ばすのが難しいレディース選手にとって、フライアット EVOの「軽打でも弾む」性能は大きな助けとなります。少ない力でも十分な威力を引き出せるため、守備的なプレーに終始することなく、積極的に攻撃を仕掛けることが可能になります。爽快な打球音も、プレーの楽しさを高めてくれるでしょう。
レビューと市場での評価
製品の性能だけでなく、実際の使用者からの声や市場での立ち位置もラバー選びの重要な指標です。
使用者レビューの傾向:「扱いやすさ」と「コストパフォーマンス」
フライアット EVOのレビューを分析すると、「良い意味で普通のライトテンションラバー」「コストを含めバランスが良い」といった評価が目立ちます。 これは、突出した性能で使用者を選ぶピーキーなラバーではなく、多くの人がその性能を引き出しやすい、バランスの取れた優等生であることを示唆しています。
特に、バック面での使用感については、「バックドライブ等のつかむ感覚を覚えたりするのに十分使える」「ミート系もやり易い」といった肯定的な意見が多く、その扱いやすさが支持されています。
価格と入手方法
フライアット EVOのメーカー希望小売価格は4,950円(税込)です。 しかし、卓球専門店やオンラインショップでは3,000円台前半から半ばで販売されていることが多く、高性能なテンションラバーとしては非常にコストパフォーマンスが高いと言えます。
この価格帯は、トップ選手が使用する1万円近いラバーに比べて手が出しやすく、消耗品であるラバーを定期的に交換する必要がある学生や一般プレイヤーにとって大きなメリットです。
まとめ:勝てる卓球への確かな一歩を、フライアット EVOで
ニッタク フライアット EVOは、「スピード」「扱いやすさ」「コストパフォーマンス」という3つの要素を高次元で融合させた、非常にバランスの取れた裏ソフトラバーです。
高弾力スポンジとAC技術がもたらすスピード性能は、試合を有利に進めるための武器となり、柔らかい打球感と優れたグリップ力は、技術習得段階にあるプレイヤーを優しくサポートします。特に、ステップアップを目指す初〜中級者や、安定したバックハンドを求める選手にとって、これほど頼りになるパートナーはいないでしょう。
フライアット EVOが提供する価値:
- 速さ:軽打でも鋭いボールを放ち、ラリーの主導権を握る。
- 安定感:ボールを掴む感覚があり、ミスを恐れず振っていける安心感。
- 成長:基本技術の習得から応用まで、プレイヤーの成長を支える。
「最高が最良とは限らない」という言葉があるように、必ずしもトッププロ仕様のラバーが自分に合うとは限りません。自分のレベルやプレースタイルに合った扱いやすい用具を選ぶことこそが、上達への一番の近道です。フライアット EVOは、まさにその「最良」の選択肢となりうる、現代のスタンダードラバーと言えるでしょう。




