時代を超えて愛される粒高のスタンダード
ヤサカ(Yasaka)の「ファントム0012∞(インフィニティ)」は、数ある卓球の粒高ラバーの中でも、長年にわたり多くのプレイヤーから支持され続けるロングセラーモデルです。その魅力は、特定の性能に特化した「尖った」ラバーとは一線を画す、攻守のバランスと卓越したコントロール性能にあります。初心者から上級者まで、幅広い層のプレイヤーがその性能を最大限に引き出せる可能性を秘めています。
本記事では、このクラシックな粒高ラバー「ファントム0012∞」がなぜ今なお選ばれ続けるのか、その性能をユーザーレビューや公式情報を基に徹底的に分析し、その魅力の核心に迫ります。
ファントム0012∞の基本スペックと性能評価
公式スペックと物理的特徴
ファントム0012∞は、スポンジのない「一枚ラバー(OX)」として展開されています。公式に発表されている主なスペックは以下の通りです。
- 種類: 粒高一枚ラバー
- 粒の高さ: 1.7mm (ヤサカ 2024年カタログより)
- 公認: 国際卓球連盟(ITTF)、日本卓球協会(JTTA)公認
- 製造国: 日本
- 公式性能値: スピード: 5, スピン: 3+, コントロール: 11+ (※ヤサカの基準値。マークVを10とした場合)
物理的な特徴として、多くのレビューで指摘されているのが、ラバーの接着面に布地のような加工が施されている点です。これにより、一般的な一枚ラバーと比較して接着がしやすく、打球感がマイルドになるという効果が報告されています。粒の硬度は「やや硬め」と評されることが多く、これが後述する鋭い切れ味と攻撃性能に繋がっています。
ユーザーレビューに見る性能評価
メーカーの公式数値はあくまで一つの指標です。実際に使用したプレイヤーがどのように感じているかを見ることで、ラバーの多面的な性格が明らかになります。日本の卓球レビューサイト「卓球ナビ」に寄せられた複数のレビューから性能評価を抽出し、グラフ化しました。
このグラフから明らかなように、評価はレビュアーによって大きく異なります。特に「スピン」の評価は10点満点中4点から10点までと幅広く、これはファントム0012∞の特性を如実に示しています。つまり、プレイヤーが自ら回転を「切る」技術を用いることで、ラバーの性能が大きく引き出されることを意味します。一方で、「コントロール」は総じて高い評価を得ており、安定性の高さが伺えます。
核心的特徴:なぜファントム0012∞は選ばれ続けるのか
ファントム0012∞の魅力は、単なるスペックの数値だけでは語れません。多くのプレイヤーが口を揃える3つの核心的な特徴を掘り下げます。
「切る」快感:卓越したカット性ブロック
「重くて硬いプラボールで、誰でも・めちゃくちゃブロックが切れる粒高に変貌しました。」
ファントム0012∞の最大の武器として挙げられるのが、相手の強烈なトップスピンに対するカット性ブロックの切れ味です。多くのレビューで「驚くほど切れる」「相手がネットミスを連発する」といった声が上がっています。これは、やや硬めで反発を抑えた粒が、相手のボールの威力を吸収しつつ、鋭い下回転に変換するためです。特に、プラスチックボール時代になってから、その性能が再評価されています。
重要なのは、このラバーが「当てるだけ」で自動的に変化を生むタイプではない点です。プレイヤーが能動的にラケットを振って「切る」意識を持つことで、初めてその真価が発揮されます。この「自分でボールを操り、切れ味を生み出す」感覚が、多くの上級者を魅了する要因となっています。
守備だけではない:多彩な攻撃性能
「粒高=守備専門」というイメージを覆すのが、ファントム0012∞のもう一つの顔です。硬めの粒は攻撃時にも安定感をもたらし、多彩な攻撃を可能にします。
- プッシュとミート打ち: 相手のツッツキや短いボールに対し、鋭いプッシュやフラットなミート打ちで攻撃できます。コースを狙いやすく、相手を揺さぶるのに有効です。
- 攻撃的なブロック: 相手のドライブに対して、ただ止めるだけでなく、カウンター気味に押し込むブロックも得意です。
- 限定的なドライブ: 上級者の中には、このラバーで下回転を持ち上げ、ドライブのような攻撃を仕掛けるプレイヤーもいます。シートの引っかかりが良いため、限定的ながら回転をかける攻撃も可能です。
このように、守備でチャンスを作り、自ら攻撃に転じるという攻守の切り替えがスムーズに行える点が、現代卓球において非常に価値のある特徴と言えるでしょう。
絶妙なバランスが生む高いコントロール性能
ファントム0012∞は、極端な変化やスピードを追求するのではなく、「扱いやすさ」と「変化」を高次元で両立させています。公式の性能値で「コントロール:11+」と非常に高く設定されている通り、ボールの長短のコントロールがつけやすく、狙ったコースに安定して返球できます。
この安定性は、粒高を初めて使う選手にとっては技術習得の助けとなり、上級者にとっては戦術の幅を広げる基盤となります。相手の回転の影響を適度に受け流しつつ、自分の意志でボールをコントロールできるため、ラリーの中で主導権を握りやすくなります。あるレビューでは「尖った強みがない代わりに、大きな弱点もないバランスの良いラバー」と評されており、まさにその通りと言えるでしょう。
他の人気粒高ラバーとの比較
ファントム0012∞の立ち位置をより明確にするため、他の人気粒高ラバーと比較してみましょう。特に頻繁に比較対象となるのが、VICTAS(旧TSP)の「カールP-1」シリーズや、Butterflyの「フェイント・LONG」シリーズです。
- 対 カールP-1R: カールP-1Rは変化の大きさで定評がありますが、その分扱いにくさも伴います。ファントム0012∞は、カールP-1Rに比べてコントロール性能が格段に高く、より安定したプレーが可能です。ある海外レビューでは「非プロ選手にとっての、よりコントロールしやすいカールP-1R」と表現されています。
- 対 グラスD.TecS: テンション技術を搭載したグラスD.TecSは、弾みが強く、自動的な変化が出やすいのが特徴です。一方、ファントム0012∞は弾みが抑えられており、自分から切っていくことで変化を生み出すマニュアル的な操作感が強いラバーです。どちらが良いかはプレースタイルによります。
あるブロガーによる詳細な比較分析では、自分から切った際の最大回転反転量において、ファントム0012∞は他の有名粒高(ジャイロ、オクトパス)を上回るとされています。これは、アクティブなプレイヤーにとって非常に魅力的なデータです。
どのような選手におすすめか?
これまでの分析を踏まえると、ファントム0012∞は以下のような選手に特におすすめできます。
- 粒高入門者からステップアップしたい選手: 「当てるだけ」のプレーから脱却し、自分でボールをコントロールして変化をつける技術を身につけたい選手に最適です。扱いやすさと奥深さを兼ね備えています。
- 攻守にバランスの取れたプレーを目指す選手: 守備で粘りながらも、チャンスボールは積極的に攻撃したいオールラウンドな粒高プレイヤーにフィットします。
- コストパフォーマンスを重視する選手: 高性能ながら、定価2,750円(税込)と非常に手頃な価格設定です。継続的に使用する上で、このコストパフォーマンスの高さは大きなメリットです。
一方で、「ラバーの性能に頼って楽に変化を出したい」と考える選手や、完全にパッシブなブロックのみを主体とする選手には、他の選択肢の方が合うかもしれません。
総括:信頼性とコストパフォーマンスに優れた一枚
ヤサカ ファントム0012∞は、派手さはないものの、「コントロール」「切れ味」「攻撃性能」という粒高に求められる要素を高いレベルで満たした、非常に完成度の高いラバーです。プレイヤーの技術に実直に応え、使えば使うほどその奥深さを感じさせてくれます。
時代が移り変わり、用具が進化する中でも変わらぬ評価を得ているのは、その普遍的なバランス性能と、プレイヤーの創造性を引き出す懐の深さがあるからでしょう。信頼できる相棒として、長く付き合える一枚を探しているなら、ファントム0012∞は間違いなく試す価値のある選択肢です。
商品のご購入はこちら
ヤサカ ファントム0012∞は、全国の卓球用品店やオンラインストアで購入可能です。以下にAmazonの販売ページへのリンクを掲載します。レビューや価格を確認し、ぜひあなたの卓球スタイルに取り入れてみてください。




