「ペンホルダーは絶滅寸前?」卓球界の定説を覆す、現代ペンホルダーの逆襲と未来


  1. 「ペンホルダーはもういない」は本当か? 卓球界の常識に挑む
  2. 【本編】なぜペンホルダーは「少数派」になったのか? 3つの視点からの徹底分析
    1. 1. 技術的・身体的視点:伝統的ペンホルダーが抱える構造的課題
      1. 最大の壁「バックハンドの弱点」
      2. 手首の自由度という「諸刃の剣」
      3. 習得難易度の高さ
    2. 2. 卓球という競技の環境変化
      1. プラスチックボールの導入によるゲーム性の変化
      2. 高速化するラリーと「バックハンド主戦」への移行
      3. 「進化なき者は去るのみ」というトップ界の現実
    3. 3. シェークハンドの優位性と「クロスオーバーポイント」の比較
      1. シェークハンドの強み:攻守のバランス
      2. 弱点の比較分析:クロスオーバーポイントの功罪
      3. キーポイント:なぜペンホルダーは少数派になったのか
  3. ペンホルダーの逆襲:絶滅ではない、「裏面打法」による進化と新世代の台頭
    1. 1. RPB(裏面打法)革命:バックハンド弱点の克服
      1. 技術的優位性:中陣からのパワー
      2. RPBの系譜と課題
    2. 2. 新世代ペンホルダーの躍進
      1. 欧州からの刺客:フェリックス・ルブランとダン・チウ
      2. 中国の秘密兵器:薛飛(シュエ・フェイ)
  4. 【実践ガイド】それでも君はペンを握るか? 現代ペンホルダーのための用具選び完全マニュアル
    1. ペンホルダー用具の基礎知識
      1. ラケットの種類:中国式ペンと日本式ペン
      2. ラバーの貼り方とルール
      3. グリップの調整(サンディング)
    2. 【レベル・戦型別】おすすめペンホルダーラケットの選び方
      1. 1. 初心者向け:まずはコントロール重視で
      2. 2. 中級者向け:裏面打法(RPB)への挑戦
      3. 3. 上級者・ドライブ主戦型:威力を追求する
      4. 4. 日本式ペン・速攻型:伝統と破壊力
      5. ラケットメーカーの価格帯傾向
    3. 【Amazonで買える】おすすめペンホルダーラケット10選
    4. ラケットだけじゃない!ペンホルダーの必須ギア
      1. ラバー選びの指針
      2. あると便利な関連グッズ(Amazonリンク付き)
  5. 結論:ペンホルダー購入前に確認すべき最終チェックリスト
    1. ステップ1:自分のレベルと目指す戦型を明確にする
    2. ステップ2:ラケットに合わせるラバーの組み合わせを考える
    3. ステップ3:試打レビューや口コミを徹底的に確認する
    4. 最後のメッセージ

「ペンホルダーはもういない」は本当か? 卓球界の常識に挑む

「最近、卓球の試合でペンホルダーを見かけなくなった」「シェークハンドが主流で、ペンはもう古いのでは?」——卓球を愛する多くのファンが、一度は抱いたことのある疑問ではないでしょうか。テレビで世界大会を観戦しても、コートに立つ選手のほとんどがシェークハンドでラケットを握り、両ハンドから繰り出される高速ラリーに、ペンホルダーの居場所はもはやないかのように見えます。

この認識は、決して単なる印象論ではありません。実際に、トップレベルにおけるシェークハンドの使用率は圧倒的です。ある研究報告によれば、2017年の時点で世界のトップ20にランクインする男子選手のうちペンホルダーはわずか2名、女子選手に至っては皆無でした。このデータは、「ペンホルダーは少数派である」という現実を冷徹に突きつけます。

しかし、物語はここで終わりません。水面下では、いや、今や世界のトップシーンという檜舞台で、「ペンホルダーの逆襲」とも呼ぶべき新たな潮流が生まれつつあります。フランスの若き天才、フェリックス・ルブラン。ドイツの技巧派、ダン・チウ。そして、卓球王国・中国が久々に代表に送り込んだペンドラ、薛飛(シュエ・フェイ)。彼らは、旧来のペンホルダーのイメージを覆す革新的なプレーで、世界の頂点を狙えることを証明しています。

これは単なる「衰退」や「絶滅」の物語なのでしょうか? それとも、時代の変化に対応するための「進化」と「再定義」の過程なのでしょうか? 本記事では、まず「なぜペンホルダーは減少したのか」という歴史的・技術的背景を、科学的知見も交えながら深く掘り下げます。次に、裏面打法(RPB)という技術革新がもたらした変化と、新世代の選手たちが見せる新たな可能性を分析します。そして最後に、これからペンホルダーを始めたい、あるいは使い続けたいと願うすべてのプレイヤーに向け、具体的な用具選びのガイド(Amazonで購入可能な商品を含む)までを網羅的に提供します。ペンホルダーの過去、現在、そして未来を巡る旅に、ようこそ。

【本編】なぜペンホルダーは「少数派」になったのか? 3つの視点からの徹底分析

ペンホルダーが少数派となった背景には、単一の理由ではなく、技術的課題、競技環境の変化、そしてライバルであるシェークハンドの優位性という、3つの要因が複雑に絡み合っています。このセクションでは、それぞれの視点から、ペンホルダーが直面してきた困難を徹底的に解剖します。

1. 技術的・身体的視点:伝統的ペンホルダーが抱える構造的課題

ペンホルダー、特に裏面打法が普及する前の伝統的なペンホルダースタイル(Traditional Penhold Backhand, TPB)は、その握り方自体に由来する構造的な課題を抱えていました。これが、現代卓球において苦戦を強いられる最大の要因となりました。

最大の壁「バックハンドの弱点」

ペンホルダーの最大の課題として常に指摘されてきたのが、「バックハンドの弱点」です。伝統的なペンホルダーのバックハンドは、主にブロックやショートといった守備的な技術が中心となり、シェークハンドのような威力のある攻撃的なバックハンドドライブを打つことが極めて困難でした。この感覚的な弱点は、科学的な研究によっても裏付けられています。

2020年に発表された生体力学に関する研究では、上級レベルの男子選手を対象に、シェークハンドとペンホルダーの打球動作を比較分析しました。その結果、フォアハンドにおいては両グリップ間でラケット速度やボール速度に有意な差は見られなかったものの、バックハンドストロークにおいては、ペンホルダーはシェークハンドに比べて最高ラケット速度と最高ボール速度が著しく低いことが明らかになりました。

同研究は、その原因を次のように分析しています。シェークハンドのバックハンドが肩、肘、前腕の回旋(ひねり)を連動させて大きなパワーを生み出すのに対し、ペンホルダーのバックハンドはこれらの関節の可動域が制限されがちです。さらに、ペンホルダーはラケットと前腕の軸が一直線になりにくく、屈曲した(曲がった)状態になるため、体が生み出したエネルギーを効率的にボールに伝えることが難しいのです。つまり、ペンホルダーのバックハンドは、物理的にパワーを出しにくい構造になっていると言えます。

手首の自由度という「諸刃の剣」

一方で、ペンホルダーにはシェークハンドにはない明確な利点があります。それは、ペンを持つように握ることから生まれる、圧倒的な手首の自由度です。手首の可動域は約270°にも及び、これにより多彩な回転(特に横回転系)をかけたトリッキーなボールや、相手の意表を突くコースへの打ち分け、そして打球の瞬間までコースを隠すような偽装動作が容易になります。かつての名選手たちは、この手首の妙技を駆使して世界を制しました。

しかし、この利点は「諸刃の剣」でもあります。自由度が高いということは、裏を返せば安定性が低いということです。特に、現代卓球の基本となる純粋なトップスピン(上回転)やバックスピン(下回転)を安定してかけ続けることは、ボールを斜めに捉えやすいペンホルダーにとっては、シェークハンドよりも高い技術と繊細な感覚が要求されます。この不安定さが、特にラリー戦でのミスにつながりやすい要因となります。

習得難易度の高さ

「バックハンドの弱点」と「手首の扱いの難しさ」という2つの課題は、ペンホルダーの「習得難易度の高さ」に直結します。卓球を始めたばかりの初心者が、攻守にバランスの取れたシェークハンドの選手と対戦した場合、バック側を執拗に攻められて何もできずに終わってしまう、という経験をしやすいのです。

ある卓球フォーラムでは、ペンホルダーへの転向を考えるプレイヤーに対し、経験者からこんな声が寄せられています。

「ペンホルダーは正しいグリップを見つけるのに数ヶ月かかる。手の大きさや、フォア主戦かバック主戦かによってもグリップは変わる。シェークハンドに比べて選択肢も少ないし、ラケットを削って調整する必要もある。習得には時間もお金もかかるが、クールで楽しいよ」

このような初期段階での困難さが、多くのプレイヤーをシェークハンドへと向かわせ、ペンホルダーを続けるプレイヤーが少なくなってしまった大きな理由の一つと言えるでしょう。強靭なフットワークでバック側の弱点をすべてフォアハンドでカバーするか、後述する革新的な技術を習得しない限り、現代卓球のスピードについていくのは容易ではなかったのです。

2. 卓球という競技の環境変化

ペンホルダーの苦境は、技術的な課題だけでなく、卓球というスポーツそのもののルールや用具の変更によって、さらに加速されました。特に「ボールの変更」とそれに伴う「戦術の高速化」は、伝統的なペンホルダースタイルに大きな逆風となりました。

プラスチックボールの導入によるゲーム性の変化

2014年頃から、従来のセルロイド製ボールに代わり、プラスチック製ボール(ポリボール)が国際大会で全面的に採用されるようになりました。この変更は、卓球のゲーム性に大きな影響を与えました。プラスチックボールは、セルロイドボールに比べて回転がかかりにくく、また空気抵抗が大きいためスピードも若干落ちるという特性があります。

一見すると、スピードが落ちるならラリーが続きやすくなるように思えます。しかし、回転量の減少は、ペンホルダーが得意としてきた「回転の変化で相手を惑わし、チャンスボールを作って一撃で仕留める」という戦術の効果を薄れさせました。強烈なスピンサーブからの3球目攻撃や、繊細な台上技術で相手を崩すといったプレーの優位性が相対的に低下し、代わりに、多少回転が甘くても打ち抜けるパワーと、長いラリーを安定して続けられる能力がより重要になったのです。

高速化するラリーと「バックハンド主戦」への移行

回転量の減少は、ラリーの高速化という逆説的な現象を生み出しました。相手のボールの回転を読み切る必要性が少し減り、より早い打点でボールを捉え、カウンターを狙うプレーが主流となったのです。現代卓球は、台から下がらず、前陣から中陣で両ハンドから絶え間なく攻撃を仕掛ける超攻撃的なスタイルへと進化しました。

この流れの中で、勝敗を分ける鍵となったのが「バックハンドの攻撃力と安定性」です。フォアハンドは誰でも強力なボールを打てますが、バックサイドに来たボールをいかに攻撃的に、かつ安定して処理できるかが、トップ選手に求められる必須条件となりました。この「バックハンド主戦」とも言える時代において、バックハンドに構造的な課題を抱える伝統的ペンホルダーは、戦術的に極めて不利な立場に置かれることになったのです。

「進化なき者は去るのみ」というトップ界の現実

このような環境変化に適応できなければ、トップの世界では生き残れません。その象徴的な例が、卓球界のレジェンド、馬龍(マ・ロン)選手です。彼は元々、強力なフォアハンドを主体とするプレースタイルでしたが、張本智和選手のようなバックハンドの強い若手が登場すると、自身のプレースタイルを前陣での高速両ハンドスタイルへと大胆に変化させ、世界の頂点に君臨し続けました。

一方で、この変化の波に乗り切れなかった選手たちがいました。中国では、馬龍選手とほぼ同世代でありながら、プレースタイルの大きなアップデートが見られなかった周雨選手や方博選手らが、若くして代表チームを去ることになりました。この記事では「進化なき者は去るのみ」と表現されており、世界のトップで戦い続けることの厳しさを物語っています。ペンホルダー選手も例外ではなく、伝統的なスタイルに固執するだけでは、この高速化・両ハンド化の潮流から取り残されてしまう運命にあったのです。

3. シェークハンドの優位性と「クロスオーバーポイント」の比較

ペンホルダーの減少を語る上で、競合するシェークハンドグリップの優位性を理解することは不可欠です。シェークハンドは、現代卓球が求める要素に非常にマッチした、合理的でバランスの取れたグリップと言えます。

シェークハンドの強み:攻守のバランス

シェークハンドの最大の強みは、フォアハンドとバックハンドの両方で、安定して質の高いボールを打てる点にあります。ラケットの両面を自然に使えるため、体のどちら側に来たボールに対しても、攻撃的なドライブと安定したブロックを同じように繰り出すことができます。この「攻守のバランスの良さ」が、あらゆる状況に対応しなければならない現代の高速ラリーにおいて、絶大なアドバンテージとなるのです。

初心者にとっても、シェークハンドは直感的に理解しやすく、比較的早い段階で両ハンドのラリーができるようになるため、卓球の楽しさを感じやすいというメリットがあります。これが、世界中でシェークハンドが普及し、競技人口の大多数を占める理由です。

弱点の比較分析:クロスオーバーポイントの功罪

もちろん、シェークハンドにも弱点は存在します。それは「クロスオーバーポイント」と呼ばれる、体の中心(みぞおちや肘のあたり)に来たボールの処理です。このエリアに来たボールは、フォアハンドで打つべきか、バックハンドで打つべきかの判断が難しく、一瞬の迷いが致命的なミスにつながることがあります。この切り替えの瞬間が、シェークハンドプレイヤーにとっての数少ない弱点とされています。

対照的に、ペンホルダーはこのクロスオーバーポイントが存在しません。体の中心に来たボールは、手首を利かせてフォアハンドで自然に処理できるため、切り替えの迷いが生じにくいのです。これは、ペンホルダーが持つ明確な利点の一つです。

しかし、現代卓球の文脈でこの二つの弱点を比較すると、その重要度は大きく異なります。シェークハンドのクロスオーバーポイントは、厳しいコースに来たボールであり、トップ選手は卓越したフットワークと判断力でこの弱点を最小限に抑えています。一方で、ペンホルダーのバックハンドの弱点は、ラリーのあらゆる局面で露呈する可能性のある、より根本的な課題です。現代の高速ラリーにおいては、ペンホルダーが持つ「クロスオーバーポイントがない」という利点よりも、シェークハンドが持つ「両ハンドでの高い対応力」が、総合的に見て優位に働いているのが現状と言えるでしょう。

キーポイント:なぜペンホルダーは少数派になったのか

  • 技術的課題:伝統的なペンホルダーは、生体力学的にバックハンドで威力を出しにくい構造であり、習得も難しい。
  • 環境変化:プラスチックボールの導入により回転量が減少し、ペンホルダーの「変化で崩す」戦術が効きにくくなった。
  • 戦術の進化:卓球が前陣での高速両ハンド攻撃主体となり、バックハンドの攻撃力が勝敗を分ける重要な要素になった。
  • シェークの優位性:攻守にバランスが取れ、両ハンドで安定した攻撃が可能なシェークハンドが、現代卓球の環境により適していた。

ペンホルダーの逆襲:絶滅ではない、「裏面打法」による進化と新世代の台頭

伝統的なペンホルダースタイルが苦境に立たされる一方で、ペンホルダーは決して歴史の遺物として消え去ろうとしているわけではありません。むしろ、最大の弱点であったバックハンドを克服するための技術革新「裏面打法(Reverse Penhold Backhand, RPB)」によって、劇的な進化を遂げ、新たな強みを持ったプレースタイルとして生まれ変わりつつあります。

1. RPB(裏面打法)革命:バックハンド弱点の克服

RPBは、その名の通り、ラケットの裏面(バック面)を使ってバックハンドを打つ技術です。これにより、ペンホルダーでありながら、シェークハンドと遜色のない、あるいはそれ以上の威力を持つバックハンドドライブを打つことが可能になりました。この技術の登場は、ペンホルダーの歴史における最大の革命と言っても過言ではありません。

技術的優位性:中陣からのパワー

RPBは、単に「シェークハンドの真似事」ではありません。ペンホルダー特有のグリップから繰り出されるRPBには、独自の利点が存在します。ある卓球フォーラムの熱心なプレイヤーは、そのメカニズムを鋭く分析しています。

「RPBはシェークハンドより不安定だが、弱くはない。中距離からのバックハンドなら、シェークハンドよりパワーを出せる。ペンホルダーの生体力学は2つのレバー(肘から手首、手首からラケット先端)を使えるが、シェークハンドは手首の可動域が限られるため、1つのレバーシステムに近い。この2つのレバーシステムが、強い手首があればより大きなパワーを生み出す選択肢を与えるんだ」

この分析が示すように、手首の自由度が高いペンホルダーだからこそ、RPBはスイングの加速距離を長く取ることができ、特に台から少し距離を取った中陣からの打ち合いにおいて、シェークハンドを凌駕するほどの威力を発揮するポテンシャルを秘めているのです。

RPBの系譜と課題

このRPBを世界トップレベルで完成させたのが、元世界チャンピオンの王皓(ワン・ハオ)選手です。彼はバックハンドのほとんどをRPBで処理し、ペンホルダーの新たな時代を切り拓きました。その後、許昕(シュ・シン)選手は、伝統的なペンホルダーの強みである強力なフォアハンドと、要所で使う鋭いRPBを融合させ、より多彩なプレースタイルを確立しました。

しかし、RPBも万能ではありません。シェークハンドの安定したバックブロックに比べると、RPBでのブロックは安定性に欠けるという意見が多く見られます。また、シェークハンドよりもスイングが大きくなるため、相手の速いボールに対しては、より多くのスペースと反応時間が必要になるという課題も指摘されています。RPBを習得し、試合で有効に使うためには、やはり相応の練習量と時間が必要となるのです。

2. 新世代ペンホルダーの躍進

RPBという武器を手に入れた現代のペンホルダーは、今、新たな世代のスター選手たちによって、その可能性をさらに押し広げられています。特にヨーロッパからの新星の登場は、卓球界に大きな衝撃を与えました。

欧州からの刺客:フェリックス・ルブランとダン・チウ

「ペンホルダーの未来はヨーロッパにあるのか?」——2022年頃から、卓球メディアでこんな見出しが躍るようになりました。その中心にいるのが、フランスのフェリックス・ルブラン選手と、ドイツのダン・チウ選手です。

10代で世界のトップランカーに駆け上がったF・ルブラン選手は、非常に独特なグリップから、まるでシェークハンドの選手のように前陣で超攻撃的な両ハンドを振るいます。彼のプレーは、ペンホルダーの常識を覆すものであり、その予測不能なスタイルは多くのトップ選手を悩ませています。一方、ダン・チウ選手は、安定したRPBと戦術的なプレーでヨーロッパチャンピオンに輝きました。彼は、ペンホルダーの現状について次のように語っています。

「ペンホルダーを使うトップ選手が少ないので、参考にしたり憧れたりする選手が多くない。そのため、自分自身で道を創造していかなくてはなりません。この点が、ペンホルダーの難しいところだと思います」

彼の言葉は、現代ペンホルダーが直面する困難と、それを乗り越えようとする創造性や探求心を象徴しています。

中国の秘密兵器:薛飛(シュエ・フェイ)

ペンホルダーの本場とも言える中国でも、新たな動きが見られます。2025年の世界卓球選手権ドーハ大会の代表選考会で、右ペンドライブ型の薛飛(シュエ・フェイ)選手が代表の座を勝ち取りました。中国代表チームのシングルスにペンドライブ型の選手が出場するのは、2019年大会の許昕選手以来のことです。これは、長らくシェークハンド一辺倒だった中国国内でも、RPBを駆使する現代ペンホルダーの価値が再評価されている証拠と言えるかもしれません。

これらの新世代の選手たちの活躍は、「ペンホルダーは古い」という定説を覆し、RPBを武器とする現代的なペンホルダースタイルが、シェークハンドと互角以上に渡り合える高いポテンシャルを秘めていることを力強く示しています。彼らは絶滅危惧種ではなく、卓球という競技の多様性を豊かにする、新たな進化の形なのです。

【実践ガイド】それでも君はペンを握るか? 現代ペンホルダーのための用具選び完全マニュアル

ペンホルダーの魅力と可能性を理解した上で、実際に「ペンを握ってみたい」と考えるプレイヤーのために、ここからは具体的な用具選びのガイドを展開します。用具の選択は、プレースタイルを方向づけ、技術習得を左右する極めて重要なステップです。

ペンホルダー用具の基礎知識

まず、ペンホルダー用のラケットとラバーに関する基本的な知識を押さえておきましょう。

ラケットの種類:中国式ペンと日本式ペン

ペンホルダーラケットは、大きく分けて「中国式ペン(C-pen)」と「日本式ペン(J-pen)」の2種類があります。

  • 中国式ペン (C-pen): グリップが短く、シェークハンドのブレード(打球面)をそのまま小さくしたような形状が特徴です。裏面にラバーを貼りやすく、現代の主流である裏面打法(RPB)に適しています。フェリックス・ルブラン選手やダン・チウ選手など、現代のトップ選手のほとんどがこのタイプを使用しています。
  • 日本式ペン (J-pen): グリップ部分にコルクが貼られ、指をかけるための突起があるのが特徴です。ブレードの形は角型、角丸型、丸型などがあります。伝統的に片面のみでプレーすることを想定しており、強力なフォアハンドドライブを武器とするスタイルに向いています。裏面打法を行うのは難しいですが、その独特の打球感と破壊力には根強いファンがいます。

ラバーの貼り方とルール

裏面打法を行う場合は、当然ながらラケットの裏面にもラバーを貼る必要があります。一方、日本式ペンのように片面のみにラバーを貼ってプレーする場合、ルール上の注意点があります。国際ルールでは、ラケットの両面は明らかに色が異なっていなければならず、片方が赤、もう片方が黒と定められています。そのため、ラバーを貼らない面には、使用するラバーと異なる色のシートを貼るか、そのように塗装されている必要があります。

グリップの調整(サンディング)

ペンホルダーは、シェークハンド以上にグリップの握り心地がプレーに影響します。多くのプレイヤーは、自分の指が当たるブレードの肩の部分を紙ヤスリで削り(サンディング)、快適な握りを追求します。特に、新品のラケットは角が立っていることが多く、長時間練習すると指を痛める原因にもなります。これは、ペンホルダーを使いこなすための重要な儀式の一つと言えるでしょう。

【レベル・戦型別】おすすめペンホルダーラケットの選び方

ラケット選びは、自分の現在のレベルと、将来目指したいプレースタイルを考慮することが重要です。ここでは4つのカテゴリーに分けて、ラケット選びの指針を示します。

1. 初心者向け:まずはコントロール重視で

2. 中級者向け:裏面打法(RPB)への挑戦

3. 上級者・ドライブ主戦型:威力を追求する

4. 日本式ペン・速攻型:伝統と破壊力

  • 特徴:ラケットの素材として最高級とされる木曽檜の単板(一枚板)を使用したモデルが代表的です。独特の柔らかい打球感と、ボールを掴んでから一気に弾き出す破壊的なスピードが魅力です。
  • こんな人におすすめ:強力なフォアハンドドライブと俊敏なフットワークで勝負する、伝統的な片面速攻スタイルを貫く選手。
  • 代表例:バタフライの「サイプレス」シリーズは、日本式ペンの代名詞的存在です。また、ラケットメーカーDARKERの「スピード90」は、数々の世界チャンピオンを生み出した名品として知られています。

ラケットメーカーの価格帯傾向

ラケット選びの参考として、主要メーカーのペンホルダーラケットの価格帯分布を見てみましょう。メーカーごとに戦略や得意な価格帯が異なることがわかります。

ヤサカは1万円未満のモデルが半数以上を占め、初心者から中級者にとって手頃な選択肢が多いことがわかります。一方、スティガは3万円以上の高価格帯モデルが約3割を占め、特に中国式ペンのラインナップが豊富で、高性能なラケットを求める上級者向けの製品に強みがあることが見て取れます。

【Amazonで買える】おすすめペンホルダーラケット10選

ここでは、上記の選び方を踏まえ、Amazonで実際に購入可能な各メーカーの代表的なペンホルダーラケットを10本厳選して紹介します。

商品名 特徴 ブレード構成 グリップタイプ
【バタフライ】ハッドロウ5-CS 木材の打球感と回転のかけやすさを両立。中級者向けで、威力も求める選手に最適。 木材5枚合板 中国式
【ニッタク】アコースティックカーボンインナー C 安定性と球持ちの良さが魅力のインナーカーボン。中陣からのドライブの安定感は抜群。 木材5枚+FEカーボン2枚 中国式
【VICTAS】SWAT コスパに優れた木材7枚合板のベストセラー。コントロールしやすく、幅広いレベルに対応。 木材7枚合板 中国式
【ヤサカ】馬林エキストラオフェンシブ 元五輪王者の名を冠した名作。適度な弾みとコントロールで、多くのペンホルダーに愛される。 木材5枚合板 中国式
【スティガ】サイバーシェイプ カーボン C-PEN 独特の六角形ブレードが広いスイートスポットを実現。最先端の技術を求める攻撃的プレイヤーに。 木材5枚+カーボン2枚 中国式
【バタフライ】張本智和 インナーフォース ALC-CS 張本選手使用モデルの中国式。ボールを掴む感覚に優れ、前陣での高速プレーをサポート。 木材5枚+ALC2枚 中国式
【バタフライ】サイプレス G-MAX 厳選された最高級木曽檜単板を使用。圧倒的な破壊力を誇る、日本式ペンの最高峰。 木曽檜単板 日本式
【VICTAS】DYNAM 10.5 10.5mmの極厚木曽檜単板が生み出すパワーは圧巻。一撃の威力を求めるパワーヒッター向け。 木曽檜単板 日本式
【ヤサカ】覇者V 遠心力を活かしやすい角型ブレード。回転量の多い威力あるボールを放つことができる。 檜単板 日本式
【バタフライ】吉田海偉 7枚合板のパワフルな中国式ペン。片面使用でも檜単板に負けない弾みを実現。 木材7枚合板 中国式

ラケットだけじゃない!ペンホルダーの必須ギア

理想のプレーを実現するためには、ラケットだけでなく、ラバーやその他のアクセサリー選びも同様に重要です。

ラバー選びの指針

ラバーは、ラケットとの組み合わせで性能が大きく変わります。一般的に、硬いラケットには柔らかめのラバーを、柔らかいラケットには硬めのラバーを合わせるとバランスが取りやすいと言われています。ここでは、フォア面と裏面(RPB)それぞれのラバー選びの考え方を紹介します。

フォア面ラバー:回転と威力を重視
ペンホルダーの生命線であるフォアハンド。その威力を最大限に引き出すため、回転性能とスピード性能が高いラバーが選ばれる傾向にあります。特に、ボールを強く掴んで強烈な回転を生み出す粘着性テンションラバーは、多くのトップ選手に支持されています。
・おすすめ例:バタフライ「ディグニクス09c」、ヤサカ「ラクザZ エクストラハード」

裏面(RPB)ラバー:軽量性と振り抜きやすさを重視
RPB用のラバーは、フォア面に比べて繊細なコントロールとスイングの速さが求められます。そのため、フォア面よりも軽量で、少し柔らかめのテンションラバーが好まれます。これにより、ラケットの総重量を抑え、素早い切り返しと振り抜きやすさを実現します。
・おすすめ例(中級者向け):バタフライ「グレイザー」は、シートの強さと扱いやすさのバランスが良く、RPBの習得に最適と評価されています。
・おすすめ例(初心者向け):ヤサカ「ライガン」は、扱いやすくコストパフォーマンスに優れ、補助的な裏面打法から始めるのに適しています。

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快適な卓球ライフを送るために、以下のアクセサリーも揃えておきましょう。

  • ラケットケース:ペンホルダーは、シェークハンドとはブレードの形状が異なる場合があるため、専用ケースや、ラケットを2本収納できるスクエアタイプのケースが便利です。デザイン性の高い商品も多く、モチベーションアップにも繋がります。
    ・おすすめ例:ニッタク「ポロメリックケース」、VICTAS「カラー ブロック ラケットケース」、キャラクターデザインケース
  • メンテナンス用品:ラバーの性能を維持するためには、日々のメンテナンスが欠かせません。練習後には、ラバークリーナーと専用のスポンジで表面のホコリや汚れを落とし、保護フィルムを貼って保管する習慣をつけましょう。
    ・おすすめ例:バタフライ ラバーケアセット、ニッタク クリーンミスト2
  • 練習球:技術を向上させるためには、たくさんのボールを使った多球練習が非常に効果的です。試合球に近い品質でありながら、コストパフォーマンスに優れたトレーニングボールを常備しておくと良いでしょう。
    ・おすすめ例:バタフライ トレーニングボール40+ (120個入)、ニッタク Dトップトレ球 (120個入)

結論:ペンホルダー購入前に確認すべき最終チェックリスト

ここまで、ペンホルダーの歴史、技術、そして未来について深く掘り下げてきました。最後に、あなたが最高の相棒となる一本を選び出すための、最終チェックリストを提示します。このステップを踏むことで、後悔のない用具選びができるはずです。

ステップ1:自分のレベルと目指す戦型を明確にする

まずは自己分析から始めましょう。以下の項目をチェックし、自分がどのカテゴリーに当てはまるか、どんなプレースタイルを目指したいかを具体的にイメージしてください。

  • [ ] 初心者:まずは卓球の楽しさを感じたい。安定した基本技術の習得が目標。
  • [ ] 中級者:基本はできるが、試合で勝つための武器が欲しい。裏面打法を習得し、両ハンドで戦いたい。
  • [ ] 上級者:自分の得意な技術(ドライブ、速攻など)をさらに磨き、競技レベルで勝ちたい。
  • [ ] 目指す戦型:ドライブ主戦型 / 前陣速攻型 / 伝統的な片面攻撃型 / 攻守バランス型 etc.

ステップ2:ラケットに合わせるラバーの組み合わせを考える

ラケットとラバーは一心同体です。それぞれの特性を理解し、相性の良い組み合わせを見つけることが重要です。基本的な考え方は「長所を伸ばす」か「短所を補う」かです。

  • 基本の指針:一般的に、硬く弾むラケットには、球持ちが良くコントロールしやすい柔らかめのラバーを。逆に、柔らかくしなるラケットには、威力を補うために硬めのラバーを合わせると、バランスが取りやすいとされています。しかし、これはあくまで一般論。最終的には自分の感覚が最も重要です。
  • 組み合わせ例:
    • 攻守バランス型:インナーカーボンのラケット + フォアに粘着テンションラバー、バックに軽量テンションラバー。→ 安定したラリーの中で、回転量の変化とスピードを両立。
    • 威力追求型:檜単板ラケット or アウターカーボンラケット + 両面にスピード系テンションラバー。→ スピードと破壊力を最大限に引き出す組み合わせ。

ステップ3:試打レビューや口コミを徹底的に確認する

カタログスペックだけではわからないのが、用具の「打球感」です。購入前には、できるだけ多くの情報を集め、自分に合いそうか慎重に判断しましょう。

  • 情報収集:YouTubeや卓球専門サイト、個人のブログで「(検討中の商品名) レビュー」と検索する。
  • 共感できるレビューを探す:レビューワーが使っている言葉(例:「球持ちが良い」「直線的に飛ぶ」「弧線を描く」など)が、自分の求める感覚と一致するか確認する。
  • 多角的な視点を持つ:肯定的な意見だけでなく、「重すぎる」「自分には弾みすぎた」「扱いきれなかった」といった否定的な意見も必ずチェックする。そのデメリットが、自分にとって許容できる範囲のものか、あるいは致命的な欠点になるのかを冷静に判断する。

最後のメッセージ

ペンホルダーの道は、シェークハンドが王道となった現代卓球において、確かに「いばらの道」かもしれません。習得には時間がかかり、参考にできる選手も限られています。しかし、そこにはシェークハンドにはない独特の打球感、手首を利した創造的なプレー、そして何より、自分だけのスタイルをゼロから創造していくという、計り知れない喜びがあります。

かつて世界を席巻したこのグリップは、絶滅したのではありません。時代の変化に対応し、RPBという新たな翼を得て、再び世界の舞台へ羽ばたこうとしています。この記事が、あなたの「ペンホルダーの道」を歩むための一助となり、最高のパートナーと出会うきっかけとなれば、これに勝る喜びはありません。