ヤサカ(Yasaka)から発売されている粒高一枚ラバー「ファントム007」。多くの異質ラバープレイヤーから長年愛され続けていますが、その実力は一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、メーカー公表のスペックから実際の使用者レビュー、ラケットとの相性までを徹底的に分析し、ファントム007の真実に迫ります。
「変化と使いやすさ重視の1.5mm粒高一枚ラバー」— これがヤサカによるファントム007のキャッチコピーです。この言葉通り、変化と安定性のバランスが、このラバーを理解する上での重要なキーワードとなります。
ファントム007の基本スペックと特徴
まず、ファントム007がどのようなラバーなのか、基本的な情報から確認していきましょう。
メーカー公表性能値
ヤサカが公表している性能値は、同社の代表的な裏ソフトラバー「マークV」を基準値10として設定されています。ファントム007の公式スペックは以下の通りです。
- スピード: 5
- スピン: 3
- コントロール: 10+
この数値から明らかなように、ファントム007は極めて高いコントロール性能を最優先に設計されたラバーであることがわかります。スピードとスピンは意図的に抑えられており、相手のボールの威力を吸収し、安定した返球を可能にすることを目指しています。
物理的特徴:布目なし1.5mm粒と布付きシート
ファントム007の性能を決定づける2つの大きな物理的特徴があります。
- 布目のない1.5mm粒
粒の表面に凹凸(布目)がないため、自ら回転をかけるのが難しく、相手の回転の影響をストレートに受けやすい、あるいは反転させやすい特性を持ちます。しかし、多くのレビューで指摘されているように、ファントム007は強いインパクトで打球しない限り、ボールはナックル性になりやすい傾向があります。これは、粒高専門サイトのレビューでも「インパクトを強くしないと、あまり回転はかからない」と述べられています。 - 裏面の布地(布付きシート)
一枚ラバーの裏面には布地が貼られています。これにより、近年のシートのみのOX(一枚)ラバーとは一線を画す、独特の硬さと打球感を生み出します。使用者からは「打球時に少し響くので安定感を感じさせる」という声があり、この布地が攻撃時の弾きやすさやブロック時の安定性に貢献していると考えられます。
使用者によるリアルな評価
メーカーの公表値だけではわからない、実際の使用感はどうでしょうか。様々な卓球歴のプレイヤーによるレビューを総合的に分析します。
攻撃性能:「弾きやすさ」と「ナックルボール」
ファントム007は守備用ラバーのイメージが強いですが、多くのレビューで攻撃性能の高さが評価されています。「ピッチの早いプッシュからの粒高フォア攻撃には最適」「粒を押しつぶして繰り出すミート打ちがしやすい」といった声があり、前陣での異質攻撃型プレイヤーにとって強力な武器となり得ます。
ただし、その球質は強烈なスピン反転というよりは、予測しにくいナックル(無回転)ボールが主体です。インパクトを強くすることで切れた下回転も出せますが、基本的にはナックル性のボールで相手を揺さぶり、チャンスメイクするスタイルに向いています。
守備性能:「高いコントロール」と「安定したブロック」
メーカーの公表値通り、コントロール性能は非常に高く評価されています。「咄嗟のブロックなどもしっかり止まります」という評価や、「威力を抑えてツーバウンドするようなブロックも簡単にできました」という声が示すように、相手の強打に対するブロックの安定性は抜群です。
特に、相手のボールの威力を吸収して短く止める「カットブロック」や、コースを突いた安定した返球で、守備から試合を組み立てる選手にとって信頼できる性能を発揮します。
変化の度合い:過度な期待は禁物
粒高ラバーに最も期待される「変化」については、評価が分かれるポイントです。ファントム007は、カールP-1のようなボールが大きく揺れたり、劇的に曲がったりするタイプのラバーではありません。
「相手コートで沈んだりうねったりの変化を求めるラバーではないです。」— こたろう氏(卓球歴:6~10年)
変化は比較的小さく、自分から積極的に粒を倒すようなインパクトを加えない限り、大きな変化は望めません。変化で点を取るのではなく、ナックルボールと安定したコントロールで相手のミスを誘うのが、このラバーの真骨頂と言えるでしょう。より大きな変化を求める場合は、同シリーズの「ファントム0012∞」などが代替候補となります。
ラケットとの相性:性能を最大限に引き出す組み合わせは?
ファントム007の性能は、組み合わせるラケットによっても大きく変わります。あるレビューサイトでは、4種類の異なるラケットとの組み合わせがテストされており、興味深い結果が示されています。
このテスト結果から、特に守備用ラケットであるティバーの「幻守」との相性が際立って良いことがわかります。攻撃技術・守備技術ともに高い評価を得ており、ラバーの持つポテンシャルを最大限に引き出せる組み合わせと言えそうです。一方で、同じヤサカの「テナシティウッド」とは意外にも相性が良くなく、ボールが安定しなかったと報告されています。
このことから、ファントム007は、ラバー自体が持つ硬めの打球感を活かせる、ややしなりがあり球持ちの良いラケットと組み合わせることで、コントロールと攻撃のバランスが向上する可能性が示唆されます。
ファントム007はどんな選手におすすめか?
これまでの分析を踏まえ、ファントム007がどのような選手に適しているかをまとめます。
おすすめの選手像
- 前陣で積極的に攻撃したい異質攻守型選手:プッシュやミート打ちなど、粒高面での攻撃を多用するスタイルに最適です。
- コントロールと安定性を重視する選手:変化の大きさよりも、確実にブロックを止め、コースを突いてラリーを組み立てたい選手。
- 粒高ラバー初心者:癖が少なく扱いやすいため、これから粒高を始める選手にとって、入門用として非常に優れた選択肢です。
- ナックルボールで相手を翻弄したい選手:回転量の変化よりも、ナックル性のボールで相手のリズムを崩す戦術を得意とする選手。
おすすめできない選手像
- 最大の変化量を求める選手:ボールの揺れや切れ味で得点したい選手には、物足りなく感じる可能性が高いです。カールP-1Rのような変化特化型ラバーの方が適しています。
- 守備専門のカットマン:カットの切れ味を最大限に活かしたい場合、より粒が柔らかく、回転をかけやすい他のラバーの方が良い選択となることがあります。ただし、カットの安定性は高いため、一概に不向きとは言えません。
価格と購入方法
ファントム007の魅力の一つに、そのコストパフォーマンスの高さがあります。メーカー希望小売価格は2,530円(税込、2024年2月改定)ですが、実売価格はさらに手頃です。
オンラインショップでは、1,600円台から2,300円程度で販売されていることが多く、高性能なラバーとしては非常にリーズナブルです。例えば、卓球ナビECでは1,598円、楽天市場では2,200円前後で見つけることができます(2025年11月時点)。
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ヤサカ ファントム007は、Amazonでも手軽に購入することができます。在庫状況や価格を確認し、レビューを参考にしながら最適な一枚をお選びください。
総括:ファントム007の立ち位置
ヤサカ ファントム007は、「変化」と「安定」という、時に相反する要素を高いレベルで両立させた、コントロール系攻撃粒高ラバーです。劇的な変化で相手を驚かせるのではなく、鉄壁のコントロールと予測不能なナックルボールを武器に、じっくりと試合を支配します。
その扱いやすさとコストパフォーマンスの高さから、粒高初心者から安定志向の上級者まで、幅広い層のプレイヤーにおすすめできる一枚です。もしあなたが「粒高でも攻撃したい」「安定感を武器にしたい」と考えているなら、ファントム007を試してみる価値は十分にあるでしょう。




