バタフライ テナジー05 FXは、卓球界の金字塔「テナジー05」の圧倒的なスピン性能を継承しつつ、より柔らかいスポンジを採用することでコントロール性能と安定性を極限まで高めたラバーです。威力よりも安定感を、ピーキーな性能よりも扱いやすさを求めるプレイヤーにとって、まさに理想的な選択肢となり得ます。
テナジー05 FXとは? – 安定性を追求した「もう一つの05」
テナジー05 FXは、株式会社タマス(バタフライ)が2010年7月1日に発売したハイテンション裏ソフトラバーです。その核心は、卓球界に革命を起こした「テナジー05」のトップシートと、新開発のスポンジの組み合わせにあります。
具体的には、多くのトップ選手から「最も回転がかかる」と評価された“開発コードNo.05”のツブ形状を持つトップシートはそのままに、スポンジをより柔らかく軽量化した「スプリング・スポンジ」を採用しています。これにより、テナジー05が持つ強烈なスピン性能というDNAを受け継ぎながら、ボールを深く掴む感覚(球持ち)が向上し、さらなるコントロール性能と安定性を追求したモデルとして誕生しました。まさに、オリジナルのテナジー05が「威力」の象徴であるならば、テナジー05 FXは「安定」を具現化した「もう一つの05」と言えるでしょう。
主要性能とスペック
テナジー05 FXの性能を理解するために、まずは公式スペックを確認しましょう。バタフライ社は2023年2月に性能指標を改定しており、現在の指標はより実戦的な評価に基づいています。
| 項目 | 性能値 | 備考 |
|---|---|---|
| テクノロジー | ハイテンション、スプリング スポンジ | バタフライ独自技術 |
| スピード | 81 | 2023年2月改定後の新指標 |
| スピン | 64 | |
| 弧線 | 65 | |
| スポンジ硬度 | 32度 | テナジー05(36度)より柔らかい |
| スポンジ厚 | 2.1mm (特厚), 1.9mm (厚), 1.7mm (中) | プレースタイルに応じて選択可能 |
| 重量 | 約46g (カット後) | テナジー05 (約48g) より軽量 |
| 原産国 | 日本 |
特筆すべきはスポンジ硬度32度という柔らかさです。これにより、ボールがラバーに深く食い込み、プレイヤーはボールをコントロールする時間的猶予を得やすくなります。また、重量がテナジー05よりも軽い点も、ラケット総重量を抑えたいプレイヤーや、振り抜きやすさを重視するプレイヤーにとって大きなメリットとなります。
テナジー05との徹底比較:何が違うのか?
テナジー05 FXを選ぶ上で最も重要なのが、オリジナルの「テナジー05」との違いを正確に理解することです。両者は同じトップシートを使用しながら、スポンジの違いによって明確な個性を持っています。
スポンジ硬度と打球感の違い
最大の違いはスポンジ硬度にあります。テナジー05が36度であるのに対し、05 FXは32度と deutlich 柔らかく設計されています。この差が、打球感に決定的な違いを生み出します。
- テナジー05: 「カチッ」とした硬めの打球感。ボールを弾き出す感覚が強く、スイングのパワーがダイレクトにボールに伝わります。
- テナジー05 FX: 「グッ」とボールを深く掴むような柔らかい打球感。球持ちが良く、ボールコントロールがしやすいのが特徴です。この食い込みの良さがプレイヤーに絶大な安心感をもたらします。
この打球感の違いは、プレイヤーの好みが分かれる重要なポイントです。パワーヒッターは05のダイレクト感を好む一方、安定感を求めるプレイヤーは05 FXの球持ちの良さを高く評価する傾向にあります。
スピードとスピンの最大値
フルスイングした際のボールの威力、つまりスピードとスピンの最大ポテンシャルにおいては、硬いスポンジを持つテナジー05に軍配が上がります。レビューサイトでも「しっかりスイングすると05の方が回転・スピードは上」という評価が一般的です。
しかし、テナジー05 FXが劣っているわけではありません。05 FXは、インパクトが強くない場面でも安定して高いスピン性能を発揮します。柔らかいスポンジがボールをしっかり掴んでくれるため、力を入れなくても回転をかけやすく、特にループドライブやツッツキでその恩恵を感じられます。つまり、「最大威力」の05、「安定した高性能」の05 FXという棲み分けが可能です。
重量と振り抜きやすさ
テナジー05 FXは、テナジー05に比べて軽量化されています。ある検証では、カット後の重量で05が約48gだったのに対し、05 FXは約46gと、約2g軽い結果が出ています。このわずかな差が、ラケットの振り抜きやすさや、長時間のプレーにおける疲労度に影響を与えます。特に、繊細な操作が求められるバックハンド面に使用する場合や、ラケット総重量を軽くしたい選手にとって、この軽量性は大きなメリットとなります。
テナジー05 FXが輝くプレースタイルと推奨プレイヤー
テナジー05 FXの特性を理解すると、どのようなプレイヤーに最適なラバーなのかが見えてきます。
バックハンドでの絶大な安定感
テナジー05 FXが最も高く評価されているのが、バックハンドでの使用です。フォアハンドに比べてスイングがコンパクトになりがちなバックハンドでは、インパクトが不足してもボールをしっかり掴んでくれる05 FXの特性が最大限に活かされます。多くのレビューで「バックハンドに持ってこい」と絶賛されており、チキータやバックドライブ、ブロックといったあらゆるバックハンド技術で高い安定性とコントロール性能を発揮します。かつて張本智和選手がバック面に使用していたことからも、その性能の高さがうかがえます。
コントロールを重視するオールラウンドプレーヤー
威力一辺倒ではなく、ラリーの安定性を重視し、多彩な技術で得点するオールラウンドなプレースタイルの選手に最適です。ボールを深く掴む感覚があるため、ドライブの弧線が安定し、ブロックも相手の球威を吸収して狙ったコースに返球しやすくなります。「軽く打ってもある程度いいボールが出てくれる」という安心感は、試合の重要な局面でミスを減らすことに繋がります。
中級者やパワーに自信のない選手へ
テナジー05 FXは、テナジーシリーズへのステップアップを考える中級者にとって理想的な一枚です。オリジナルのテナジー05は、性能を最大限に引き出すために相応のスイングスピードが要求されますが、05 FXは比較的弱いインパクトでも性能を発揮しやすいため、「テナジー05ではスイングスピードが足りない」と感じる選手におすすめです。同様の理由で、パワーに自信のない女性選手やジュニア選手にも広く支持されています。
守備技術を重視するカットマン
意外に思われるかもしれませんが、テナジー05 FXはカット主戦型の選手にも適しています。テナジー05譲りの高いグリップ力を持つシートは、ツッツキやカットで強烈な回転を生み出します。柔らかいスポンジはボールの威力を吸収しやすく、コントロールを安定させます。レビューでは「柔らかめのテンションラバーの中では、間違いなく回転量No.1」と評価されており、守備から鋭い反撃を狙う現代的なカットマンにとって強力な武器となります。
ユーザーレビューと市場での評価
テナジー05 FXは、発売から10年以上経過した現在でも、多くのプレイヤーから高い評価を得ています。様々なレビューサイトやフォーラムでの意見をまとめると、以下のような評価が共通して見られます。
肯定的な評価
- バックハンドの神ラバー:「バックハンドで使えば何でもできる」「チキータやバックドライブが非常にやりやすい」といった声が圧倒的に多いです。
- 抜群のコントロール性能:「狙ったところに飛んでくれる」「ボールを持つ感覚が強く、弧線が出て落ちる心配がない」など、コントロールのしやすさを絶賛する声が多数あります。
- 扱いやすさと威力の両立: 「コントロールしやすいのに、ある程度の威力を出すことができる」と、バランスの良さが評価されています。
- 下回転打ちの容易さ: シートの引っかかりとスポンジの食い込みにより、「下回転に対しても楽にドライブができる」という意見が多く見られます。
注意点・課題
- 回転の影響を受けやすい: 柔らかいスポンジのため、相手の回転の影響を受けやすいと感じるプレイヤーもいます。「ブロック時に少し浮く感じがある」という指摘もありますが、これはボールタッチの習熟で克服可能とも言えます。
- 最大威力は05に及ばず: パワーヒッターからは「フルスイングした時の威力は物足りない」という意見もあります。あくまで最大威力よりも安定性を重視するラバーです。
- 寿命: オリジナルのテナジー05と比較して「寿命が短い」と感じるユーザーもいるようです。
総じて、テナジー05 FXは「バックハンドでの安定性とスピン性能を求める、中級者から上級者向けのコントロール系ハイテンションラバー」として、市場で確固たる地位を築いていると言えるでしょう。
価格と購入ガイド
テナジーシリーズは高性能ゆえに価格も高めに設定されています。テナジー05 FXも例外ではなく、メーカー希望小売価格はオープン価格となっていますが、卓球専門店やオンラインストアでは税込7,000円台後半から9,000円台で販売されているのが一般的です。
また、バタフライ社は定期的に価格改定を行っており、2025年8月28日からは価格が改定される予定です。購入を検討している場合は、最新の価格情報を各販売店で確認することをお勧めします。
高価なラバーであるため、購入に迷う場合は、まず現在使用しているラバーの不満点を明確にし、テナジー05 FXの「コントロール」「安定性」「軽量性」といった特徴がその解決策となるかを検討すると良いでしょう。
まとめ:あなたにとってテナジー05 FXは最適な選択か?
テナジー05 FXは、テナジー05の卓越したスピン性能を維持しつつ、コントロールと安定性を追求した傑作ラバーです。その特性から、以下のようなプレイヤーには最適な選択となる可能性が非常に高いです。
- バックハンドの安定性と攻撃力を両立させたい選手
- 威力よりも、ラリーを安定させてミスを減らしたい選手
- テナジーシリーズを使ってみたいが、05では硬すぎると感じる中級者
- パワーに自信がなく、ラバーの性能で補いたい女性やジュニア選手
- 回転量の多いカットやツッツキで試合を組み立てたい守備型選手
一方で、ラバーに絶対的なスピードや一撃の破壊力を求めるパワーヒッターであれば、オリジナルのテナジー05やテナジー05ハードの方が適しているかもしれません。
ラバー選びは、自身の技術レベルやプレースタイルとの相性が最も重要です。この記事を参考に、テナジー05 FXがあなたの卓球を新たな高みへと導くパートナーとなり得るか、ぜひじっくりと検討してみてください。




