ラージボールの常識を変えるスピード
卓球用品メーカーの雄、バタフライ(株式会社タマス)が放つ「ラージストーム スピード」は、その名の通り、ラージボール卓球において圧倒的なスピード性能を追求して開発されたハイテンション表ソフトラバーです。従来のラージボール用ラバーのイメージを覆すほどの破壊力を持ち、スマッシュを多用する攻撃的なプレースタイルの選手から絶大な支持を得ています。
本記事では、「ラージストーム スピード」の公式スペックから、実際の使用者によるレビュー、兄弟ラバーや競合製品との比較まで、あらゆる角度からその性能を徹底的に解剖します。このラバーがなぜ多くのプレイヤーを魅了するのか、その真価に迫ります。
製品概要と基本性能
「ラージストーム スピード」は、ラージボールに求められるスピードとスピンを高次元で両立させることを目指して設計されました。数十種類もの候補の中から選び抜かれたツブ形状のシートと、硬くて弾むスポンジの組み合わせが、その卓越した性能の源泉となっています。
公式性能データ
バタフライが公表している性能指標は以下の通りです。これらの数値は、ラージボール用ラバー専用の基準で評価されています。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 種類 | ラージ用ハイテンション・表ソフトラバー |
| スピード | 13.5 |
| スピン | 11.0 |
| スポンジ硬度 | 30 |
| スポンジ厚 | 2.3mm, 2.1mm, 1.9mm |
| メーカー希望小売価格 | 5,500円(税込) |
| 原産国 | 日本 |
※バタフライの性能指標は2023年2月に改定されており、本記事は改定後の数値を基にしています。
搭載テクノロジー:「ハイテンション技術」
「ラージストーム スピード」の心臓部とも言えるのが、バタフライ独自の「ハイテンション技術」です。これは、ゴム分子に意図的に高いテンション(張力)をかけておくことで、ボールが当たった瞬間に蓄えられたエネルギーが爆発的に解放され、高い反発力を生み出す技術です。この技術により、スピードグルー(補助剤)を使用せずとも、打球のスピードとスピン性能を大幅に向上させることが可能になりました。
性能の深掘り分析:スピードの裏に隠された多才な顔
カタログスペックだけでは分からない「ラージストーム スpeed」の真の魅力は、その打球特性にあります。多くのレビューで共通して語られるのは、単なるスピード系ラバーに留まらない、バランスの取れた性能です。
圧倒的なスピード性能と直線的な弾道
このラバーの最大の特徴は、やはりそのスピードです。使用者からは「抜群のスピード性能」と評され、特にスマッシュやミート打ちの威力は特筆すべきものがあります。ある詳細なレビューでは、その弾道を次のように表現しています。
弾道は直線的で低い弧線ですが、バウンド後のボールの伸びがかなりあるラバーです。失速が少なく、バウンド後にボールが伸びる点がこのラバーの大きな特徴です。
この特性により、相手コート深くに鋭く突き刺さるようなボールを打つことができ、相手に時間を与えません。爆発的な攻撃力を求める選手にとって、これ以上ない武器となるでしょう。
スピード系らしからぬ回転性能
一般的に、スピードを追求した表ソフトラバーはスピン性能が犠牲になりがちです。しかし、「ラージストーム スピード」は、このトレードオフの関係に一石を投じます。「スピードタイプのラージ用ラバーとしては回転のかけやすさと回転量が優れている」と評価されており、その秘密はシートの摩擦力にあるようです。
レビューによれば、「粒の摩擦が非常に良く、滑りが少なくしっかりと擦れる」ため、硬式卓球のドライブのような感覚で回転をかけることが可能だと言います。これにより、単調な速攻だけでなく、ドライブを織り交ぜた戦術的なプレーも展開しやすくなっています。
硬めの打球感と優れた球離れ
スポンジ硬度30という数値は、ラージ用ラバーの中では硬めの部類に入ります。この硬めのスポンジが、球離れの良さと弾性の高さを生み出しています。ハードヒットした際にスポンジが潰れすぎず、ボールを力強く弾き飛ばすことができるため、打ち抜く感覚を重視するプレイヤーには最適な打球感です。
一方で、硬さゆえに「コントロールが難しい」と感じるプレイヤーもいるようです。しかし、多くのレビューでは、硬式用のテンション系表ソフトからの移行が非常にスムーズである点が指摘されており、ある程度の技術レベルを持つプレイヤーであれば、そのポテンシャルを十分に引き出せると考えられます。
兄弟ラバー「ラージストーム スピン」との徹底比較
バタフライには、兄弟製品として「ラージストーム スピン」が存在します。どちらを選ぶべきか悩む方のために、両者の違いを明確にしておきましょう。
最大の違いは、スポンジ硬度とそれに伴うプレースタイルへの適性です。「スピード」が硬度30の硬いスポンジで弾きを重視するのに対し、「スピン」は硬度20の柔らかいスポンジを採用し、ボールを掴む感覚と回転のかけやすさを重視しています。
性能指標を比較すると、「スピード」はスピードで勝り、「スピン」はスピン性能でわずかに上回ります。弾道も対照的で、「スピード」が直線的な弾道を描くのに対し、「スピン」は安定した弧線を描くのが特徴です。
- ラージストーム スピード: スマッシュ主体の速攻型。直線的な弾道で相手を打ち抜きたいプレイヤー向け。
- ラージストーム スピン: ドライブを多用し、回転と安定性でラリーを組み立てたいプレイヤー向け。
| 性能 | ラージストーム スピード | ラージストーム スピン |
|---|---|---|
| スピード | 13.5 | 13.0 |
| スピン | 11.0 | 11.5 |
| スポンジ硬度 | 30 | 20 |
| 特徴 | 直線的弾道、抜群のスピード | 弧線弾道、安定性、回転性能 |
どのようなプレイヤーにおすすめか?
ここまでの分析を基に、「ラージストーム スピード」が特にフィットするプレイヤー像をまとめます。
- スマッシュを多用する速攻型プレイヤー:その圧倒的なスピードと直線的な弾道は、決定打となるスマッシュの威力を最大限に高めます。
- 爆発的な攻撃力を求める選手:ラリーの主導権を握り、一発で打ち抜くパワーを求める選手に最適です。
- 硬式からラージボールへ移行する選手:特に硬式でテンション系表ソフトを使用していた場合、違和感なく移行できる打球感を持っています。
- スピードを最優先しつつ、回転も見捨てたくない選手:スピード系ラバーの中では優れたスピン性能を誇るため、戦術の幅を狭めません。
一方で、コントロールを最重視する初心者や、ボールをしっかり掴んで回転をかける感覚を好むプレイヤーは、より柔らかい「ラージストーム スピン」や他社のコントロール系ラバーを検討する方が良いかもしれません。
最適なラケットの組み合わせ
ラバーの性能を最大限に引き出すには、ラケットとの相性が重要です。「ラージストーム スピード」の硬質で弾きの良い特性を考慮すると、組み合わせるラケットによってプレースタイルを微調整できます。
- カーボン搭載ラケット: スピード性能をさらに極限まで高めたい場合、Arylate-Carbon(アリレートカーボン)などの特殊素材を搭載したラケットがおすすめです。スイートスポットが広がり、よりパワフルで安定した攻撃が可能になります。バタフライのラケットは、こうした特殊素材技術に定評があります。
- 木材合板ラケット: ラバーの硬さが気になる場合や、もう少しコントロール性能を高めたい場合は、しなりのある木材合板ラケットと組み合わせることで、打球時の球持ちが良くなり、バランスの取れた性能になります。
ラージボール専用ラケットは、軽量で反発力が高く設計されているものが多いため、ニッタクの「ラージブラスト」やVICTASの「ゼクスラージ」など、スピード系のラージ用ラケットと組み合わせるのが王道と言えるでしょう。
競合製品との比較:市場でのポジショニング
ラージボール用ラバー市場では、特にニッタク社が強力なラインナップを揃えており、「ラージストーム スピード」の主要な競合相手となっています。ここでは、主要な競合製品と性能を比較し、その中での「ラージストーム スピード」の位置づけを確認します。
- ニッタク ロイヤルプリンス: スピード16.5、スピン15.5と、現行のラージ用ラバーの中で最高峰のスペックを誇ります。トッププレイヤー向けの高性能ラバーです。
- ニッタク ロイヤルラージ: スピード15.0、スピン14.0と、スピードとスピンのバランスが非常に良く、多くのトップ選手が使用する定番ラバーです。
- ヨーラ アレグロ: スピードの速さに定評があり、硬式からの移行者にも人気があります。
この中で「ラージストーム スピード」は、バタフライ製品の中で最もスピードに特化しつつ、ニッタクのハイスペックモデルに迫る性能を持つラバーと位置づけられます。特に、バタフライ独自のハイテンション技術による打球感や品質の安定性を好むプレイヤーにとって、強力な選択肢となります。
まとめ
「バタフライ ラージストーム スピード」は、ラージボールにおいて「スピード」という最も分かりやすい武器をプレイヤーに提供してくれる高性能ラバーです。その魅力は単なる速さだけでなく、スピード系ラバーとしては優れた回転性能と、ハイテンション技術がもたらす爽快な打球感にあります。
結論として、「ラージストーム スピード」は、スマッシュで積極的に得点を狙う攻撃型プレイヤー、特に硬式表ソフトの感覚でラージボールをプレーしたい中〜上級者にとって、最高のパートナーとなり得るラバーです。
直線的な弾道で相手コートを打ち抜き、ラリーの主導権を握る快感。このラバーは、ラージボールの新たな可能性と戦術の幅を広げてくれる、まさに”スピード”の名にふさわしい一枚と言えるでしょう。




