ニッタク「ロイヤルプリンス」徹底レビュー:伝説は再び。王子の名を冠したラバーの真価


伝説の継承者「ロイヤルプリンス」とは

「ロイヤル伝説、再び――。」この力強いキャッチコピーと共に2022年9月に卓球界に登場したのが、ニッタクのラージボール用表ソフトラバー『ロイヤルプリンス』です。数々の全国タイトルを獲得し、多くのプレイヤーに愛された「ロイヤル」シリーズの系譜を受け継ぐこのラバーは、現代ラージボール卓球に求められるスピードとスピンを、かつてないレベルで両立させることを目指して開発されました。

相手を弾き飛ばすドライブとスマッシュを繰り出したいトッププレーヤーのために。数々の全国タイトルを獲得し、人気を博してきた伝説ラバーの性能を継承しつつ、グレードアップを遂げたラバーが誕生しました。

本作は、単なる後継モデルではありません。ニッタク独自の「アクティブチャージ(AC)」技術を搭載し、シートとスポンジの両面から性能を極限まで引き出すことで、競技志向の強いプレイヤーの期待に応えるトップ仕様ラバーとして設計されています。本記事では、この『ロイヤルプリンス』の性能、特徴、ユーザーレビュー、そして競合製品との比較を通じて、その真価を徹底的に解き明かしていきます。

主要スペックと技術的特徴

『ロイヤルプリンス』の性能を理解するためには、まずその根幹をなすスペックと搭載技術を知ることが不可欠です。ここでは、公式データと技術的背景を詳しく見ていきましょう。

パフォーマンス数値:スピードとスピンの黄金比

ニッタクが公表している性能数値は、『ロイヤルプリンス』が攻撃的なラバーであることを明確に示しています。

  • スピード: 16.50
  • スピン: 15.50
  • スポンジ硬度: 22.5度

スピード値「16.50」は、ニッタクのラージ用ラバーの中でも最高クラスに位置し、その圧倒的な弾みを物語っています。一方で、スピン値も「15.50」と非常に高く、単なるスピード系ラバーではなく、強力な回転を生み出す能力を兼ね備えていることがわかります。このスピードとスピンの絶妙なバランスが、『ロイヤルプリンス』の最大の武器の一つです。

革新技術「アクティブチャージ(AC)」の役割

『ロイヤルプリンス』の高性能を支える核心技術が「アクティブチャージ(AC)」です。これは、ゴム本来が持つ弾力性能を最大限に引き出すニッタク独自の技術で、ラバーに「張り感」を持たせることでボールの食い込みと反発力を向上させます。

『ロイヤルプリンス』では、このAC技術がシートとスポンジの両方に最適化されています。

  • 高密度シート:密度が大きくコシのあるシートは、ボールをしっかりと掴み、強力なスピンを生み出します。AC技術により食い込みが良くなるため、ドライブや台上技術での回転操作が容易になります。
  • 高反発スポンジ:スポンジには、AC効果を取り入れやすい特殊な素材を採用。これにより、スポンジの弾力が飛躍的に高まり、破壊力のあるスピードボールを可能にしています。

製品バリエーションと価格

『ロイヤルプリンス』は、プレイヤーの好みに合わせて複数の選択肢を提供しています。

  • 厚さ:「厚」「特厚」「MAX」の3種類。より威力を求めるプレイヤーは「MAX」を選択することが多いです。
  • カラー:従来の「レッド」「ブラック」に加え、2024年4月21日には新たに「バイオレット」が登場しました。ただし、バイオレットは厚さ「MAX」のみの展開となります。
  • 価格:メーカー希望小売価格は¥7,700(税込)です。実売価格は店舗により異なりますが、概ね¥5,000台後半から¥6,000台前半で販売されています。

パフォーマンス徹底分析:3つの核心的特徴

スペックだけでは分からない『ロイヤルプリンス』の真の性能は、実際の打球感や挙動にこそ現れます。ここでは、多くのレビューで共通して語られる3つの核心的な特徴を深掘りします。

特徴①:破壊的なスピード性能

『ロイヤルプリンス』を語る上で、最も多く言及されるのがその圧倒的なスピード性能です。試打した多くのプレイヤーが「非常にスピードが出る」「飛距離が出る」と評価しており、その威力は「破壊力抜群」とまで表現されます。

このスピードは、前述のAC技術を搭載した高反発スポンジが生み出します。ボールがラバーに当たった瞬間に力強く弾き出される感覚は、これまでのラージ用ラバーとは一線を画すものです。特に、中陣からでも相手コート深くに突き刺さるドライブや、一撃で打ち抜くスマッシュは、このラバーの真骨頂と言えるでしょう。

特徴②:強力なスピン性能

スピードだけでなく、強力なスピン性能も『ロイヤルプリンス』の大きな魅力です。密度が大きくコシのあるトップシートがボールをしっかりと掴むため、薄く捉えても強烈な回転をかけることが可能です。

これにより、スピードドライブだけでなく、回転量の多いループドライブも打ちやすくなっています。また、シートの引っ掛かりの良さはサーブやレシーブといった台上技術でも威力を発揮し、相手の意表を突く回転変化をつけやすいという利点もあります。スピードとスピンが高次元で両立しているため、攻撃のバリエーションが格段に広がります。

特徴③:強い弾みとコントロールの二面性

『ロイヤルプリンス』の3つ目の特徴は、「強い弾み」そのものです。これは威力という最大のメリットをもたらす一方で、諸刃の剣ともなり得ます。ボールがラバーに触れると、意図せずとも勝手に飛んでいってしまう感覚を持つプレイヤーも少なくありません。

弾みが強いため、攻撃では圧倒的な威力を誇ります。その一方で、ボールが勝手に飛んでいってしまうのでツッツキなどの台上技術のコントロールが難しいので練習が必要です。

特に、ツッツキやストップといった繊細なタッチが求められる場面では、ボールが浮いてしまったり、オーバーミスにつながったりするケースが報告されています。この強力な弾みを飼いならし、意のままに操るには、相応の技術と練習が求められます。この点が、『ロイヤルプリンス』が特に上級者向けとされる所以です。

競合ラバーとの比較分析

『ロイヤルプリンス』の立ち位置をより明確にするため、ニッタクの他の主要なラージ用ラバーと比較してみましょう。

vs. ロイヤルラージ:正統進化の証明

『ロイヤルプリンス』の直接の前作にあたるのが『ロイヤルラージ』です。両者の最も大きな違いはスポンジ硬度にあります。『ロイヤルラージ』のスポンジ硬度が20.0度であるのに対し、『ロイヤルプリンス』は22.5度と硬くなっています。

この硬度の違いが、より高いスピード性能と飛距離を生み出しています。打球感も『ロイヤルプリンス』の方が硬質で、より硬式ラバーに近い感覚で打つことができます。一方で、柔らかい『ロイヤルラージ』の方が扱いやすいと感じるプレイヤーもおり、安定性を重視する場合は『ロイヤルラージ』も依然として有力な選択肢です。

vs. ジュエルラージ&颯44:プレースタイルによる選択

『ロイヤルプリンス』は、ニッタクのAC搭載ラバーの中で最もハイスペックな位置づけですが、プレースタイルによっては他のラバーが適している場合もあります。

  • ジュエルラージ:スポンジ硬度が20.0度と柔らかく、ボールを深く掴む感覚が特徴。弧線を描く安定したドライブを重視するプレイヤーに向いています。威力よりも安定性を求めるならジュエルラージが選択肢となります。
  • 颯(ハヤテ)44:スポンジ硬度は『ロイヤルプリンス』と同じ22.5度ですが、より球離れが早く、直線的な弾道が特徴。スピード感を最優先するプレイヤーに適しています。『ロイヤルプリンス』は、颯44よりも回転性能が高いバランス型と言えます。

『ロイヤルプリンス』は、これら2つのラバーの良いところを併せ持った、総合力の高い万能型ラバーと評価できます。

vs. グラストリー44:最新ライバルとの差異

2024年4月に発売された『グラストリー44』は、『ロイヤルプリンス』の新たなライバルです。スポンジ硬度は同じ22.5度ですが、性能の方向性が異なります。『グラストリー44』はスピン性能を「16.00」まで高め、特にサービスやツッツキでの回転性能を重視した設計です。

スピードの『ロイヤルプリンス』、回転の『グラストリー44』という棲み分けがされており、どちらを選ぶかはプレイヤーが何を最も重視するかによります。ただし、両者の差は僅かであり、「正直そこまで大きな差は感じなかった」というレビューも見られます。

ユーザーレビューと評価:実際の声から見える実像

『ロイヤルプリンス』は、発売以来多くのプレイヤーによって試され、様々な評価が寄せられています。ここでは、実際のユーザーレビューからその実像に迫ります。

高評価のポイント:トッププレイヤーから愛好家まで

肯定的なレビューで共通して挙げられるのは、やはりその圧倒的なパフォーマンスです。

  • スピードと威力:「スピードが出て、回転も適度にかかるいいラバーです。」、「食い込んだ際は中陣からでもパワーボールが行きます。」といった声が多く、攻撃力を求めるプレイヤーから絶大な支持を得ています。
  • 打球感:「質の高い信頼できるラバーです。打球感が気に入っています。」、「硬式に近い感覚で使用できる」など、硬質で爽快な打球感を評価する意見も目立ちます。
  • 総合力:「癖がなくすぐに使える」「バランスが良く、打球が安定している」といった評価もあり、高いポテンシャルを持ちながらも、意外なほどの扱いやすさを感じるプレイヤーもいるようです。

注意点と課題:使いこなすためのヒント

一方で、その高性能ゆえの課題を指摘する声も少なくありません。最も多いのがコントロールの難しさです。

強打した時は良いボールがいきますが、ツッツキなど台上のプレーはオーバーミスがでやすいです。

ラージ歴9ヶ月のプレイヤーからは「試合になると緊張もあり、F面でのツッツキがコントロール出来ませんでした。技術力不足も否めません」という率直な意見も寄せられています。

この課題への対策として、多くの経験者がラケットとの組み合わせを挙げています。「コントロールしづらい場合は、弾みを抑えたラケットで、飛ばしたい人は、弾むラケットと合わせると良い」というアドバイスは、このラバーを使いこなす上で非常に重要です。例えば、しなりのある木材合板やインナーファイバー系のラケットと組み合わせることで、弾みを抑えつつコントロール性能を高める工夫が有効です。

ロイヤルプリンスが最適なプレイヤー像

これまでの分析を踏まえ、『ロイヤルプリンス』はどのようなプレイヤーに最も適しているのでしょうか。3つの具体的なプレイヤー像を提示します。

打ち合いを制したい攻撃型プレイヤー

中陣・後陣からでも威力のあるドライブやスマッシュで打ち合いを有利に進めたい攻撃型プレイヤーにとって、『ロイヤルプリンス』は最高の武器となります。その圧倒的なスピードと飛距離は、ラリー戦で相手を押し込み、決定打を放つチャンスを増やしてくれるでしょう。十分なスイングスピードと、強い弾みをコントロールできる技術を持つ上級者に特におすすめです。

硬式からの移行や併用を考えるプレイヤー

『ロイヤルプリンス』の硬質な打球感と、ボールを弾き出す感覚は、硬式用のテンションラバーに非常に近いものがあります。そのため、硬式卓球からラージボールに移行するプレイヤーや、両方をプレーする選手が、違和感なくスイッチできるラバーとして高く評価されています。「ボールをつかんで打ち負けない」という現代的なコンセプトは、硬式で培った打法をそのまま活かすことを可能にします。

ラバーの力で威力を補いたいプレイヤー

自身のパワーに少し物足りなさを感じているプレイヤーが、用具の力でボールの威力を向上させたい場合にも『ロイヤルプリンス』は有効です。ラバー自体が非常に弾むため、比較的コンパクトなスイングでも鋭いボールを飛ばすことができます。ただし、この恩恵を受けるには、前述の通り、弾みを制御するための基礎技術が前提となります。

結論:さらなる高みを目指すプレイヤーへの招待状

ニッタク『ロイヤルプリンス』は、「ロイヤル伝説」の名に恥じない、スピードとスピンを極めて高いレベルで融合させたトップ仕様のラージボール用ラバーです。その破壊的な威力は、攻撃的なプレイヤーにとって試合の主導権を握るための強力なアドバンテージとなるでしょう。

しかし、その強い弾みは、使い手を選ぶ諸刃の剣でもあります。特に台上での繊細なコントロールには相応の技術と習熟が求められます。このラバーのポテンシャルを最大限に引き出す鍵は、自身の技術レベルを客観的に見極め、ラケットとの最適な組み合わせを見つけ出すことにあります。

もしあなたが、現状のプレーに満足せず、一撃の威力を追求し、打ち合いで決して負けない強さを求めるのであれば、『ロイヤルプリンス』はまさに「さらなる高み」へと導いてくれる頼りがいのある王子様(プリンス)となるはずです。この招待状を受け取り、その真価を自身の腕で確かめてみてはいかがでしょうか。