卓球界で長年にわたりトッププレイヤーたちに愛され続ける「キョウヒョウ」シリーズ。その中でも、特に強烈な回転性能に特化したモデルとして、一部の熱狂的なファンから絶大な支持を得ているのが、ニッタクの「キョウヒョウ プロ2」です。
この記事では、キョウヒョウ プロ2の基本性能から、使用者によるリアルな評価、他のシリーズとの比較、そしてどのようなプレイヤーに最適なのかまで、あらゆる角度から徹底的に解説します。このラバーが持つ真のポテンシャルを理解し、あなたの卓球を新たな次元へと引き上げる一助となれば幸いです。
1. キョウヒョウ プロ2とは?基本情報とコンセプト
キョウヒョウ プロ2(品番: NR-8677)は、ニッタクが中国・紅双喜(DHS)社の日本総代理店として販売する、粘着性の裏ソフトラバーです。公式サイトによると、そのコンセプトは「キョウヒョウⅡのプロ仕様バージョン」であり、「強烈なスピンのかかったドライブ攻撃に最適」とされています。
これは、標準の「キョウヒョウ2」が持つ回転性能をさらに先鋭化させたモデルであることを意味します。より引っ掛かりの良いシートと硬いスポンジを採用することで、他の追随を許さないほどのスピン性能を追求しています。専門メディアRallysも、このラバーを「回転で相手を翻弄する」ためのツールとして紹介しており、そのキャラクターは明確です。
基本スペック
分類: 粘着性裏ソフト
スポンジ硬度: 42.5度
厚さ: 中厚、厚、特厚
カラー: レッド、ブラック
定価: ¥5,500(税抜 ¥5,000)
スピードよりも回転を最優先し、一球一球の質で勝負するプレイヤーのために設計された、まさに「スピン特化型」のラバーと言えるでしょう。
2. 性能分析:データで見るキョウヒョウ プロ2の実力
キョウヒョウ プロ2の性能を客観的に理解するために、まずは公式データを見ていきましょう。ニッタクが公表している性能値は以下の通りです。
- スピン: 15.50
- スピード: 9.75
- スポンジ硬度: 42.5
この数値で最も注目すべきは、「15.50」という驚異的なスピン性能です。これはニッタクのキョウヒョウシリーズ全体の中でも最高値であり、このラバーがどれほど回転を重視しているかを物語っています。一方で、スピードは「9.75」と控えめな数値です。これは、テンションラバーのような自動的な弾みは期待できず、自らのスイングでボールを飛ばす必要があることを示唆しています。
公式性能値と他シリーズとの比較
キョウヒョウ プロ2の立ち位置をより明確にするため、他の主要なキョウヒョウシリーズと比較してみましょう。特に比較対象となる「プロ3」や、スピード性能を高めた「ターボ」シリーズとの違いは重要です。
上のグラフから明らかなように、キョウヒョウ プロ2はスピン性能で他を圧倒しています。その代わり、スピードはシリーズ内で最も低いレベルにあります。対照的に、「プロ3」はスピン性能をやや抑えつつスピードを向上させており、よりバランスの取れた性能を目指していることがわかります。さらに、「ターボ」シリーズは「アクティブチャージ」技術によりスピードを飛躍的に高めており、全く異なるコンセプトのラバーと言えます。
このデータは、キョウヒョウ プロ2が「スピードを犠牲にしてでも、究極のスピンを求める」という、非常に尖った性能を持つラバーであることを裏付けています。
3. 使用者のレビューから探る真価:長所と短所
カタログスペックだけではわからないラバーの真の姿を探るため、実際に使用したプレイヤーたちのレビューを分析します。多くのレビューサイトや掲示板で、その個性的な性能について活発な議論が交わされています。
圧倒的な回転性能という最大の武器
使用者たちが口を揃えて絶賛するのは、やはりその圧倒的な回転量です。多くのレビューで「めちゃくちゃかかる」「回転量は申し分ない」といった声が見られます。
ループドライブをすると弧線が高く深く入って相手の台に入って一気に加速します。
特にループドライブの質は特筆もので、強烈な回転によって描かれる高い弧線と、バウンド後の鋭い変化は相手にとって大きな脅威となります。また、サーブやツッツキといった細かい技術においても、その強い粘着シートが威力を発揮し、「切れた短いサーブと台上、前陣でプレーする選手に人気」 と評価されています。
乗り越えるべき課題:スピード、重量、そして使い手を選ぶ特性
一方で、キョウヒョウ プロ2を使いこなすにはいくつかの課題も存在します。
- スピード不足: 多くの使用者が「スピードが出にくい」「弾まない」と指摘しています。卓球ログでは「ボールの飛距離はテンション系のラバーと比較すると少し弱い」と分析されており、中・後陣でのラリーではパワー不足を感じる場面があるようです。
- 重量: 粘着ラバー特有の重さも特徴の一つです。「ラバー自体が重め」「ずっと振ってるとキツイ」といった声があり、ラケット全体の総重量が増すため、相応の筋力が求められます。
- 回転への敏感さ: 自分が回転をかけやすいということは、同時に相手の回転の影響も受けやすいことを意味します。COCOTAKUのレビューでは「回転の影響もかなり受けやすいのでループドライブに対するカットの角度の調整は慣れが必要」と述べられています。
これらの特性から、キョウヒョウ プロ2は誰にでも扱えるラバーではなく、その性能を最大限に引き出すためには、プレイヤーの技術とパワーが不可欠な、まさに「プロ仕様」のラバーと言えるでしょう。
4. 技術別適性:どんなプレーで輝くか?
キョウヒョウ プロ2の尖った性能は、どのような技術や戦術で最も輝くのでしょうか。技術別の適性を掘り下げていきます。
ドライブ:回転で制するループドライブの威力
このラバーの真骨頂は、何と言ってもループドライブです。強い粘着シートがボールをがっちりと掴み、強烈な上回転を生み出します。その結果、ボールは高い弧線を描きながら相手コートに深く突き刺さり、バウンド後には加速するように伸びる、あるいは沈むといった変化を見せます。スピードドライブについては、威力のあるボールを打つために相当なスイングスピードとパワーが要求されますが、決まった時のボールの重さは格別です。
台上技術:繊細なタッチでアドバンテージを握る
弾みが抑えられているため、台上でのコントロールが非常にしやすいのも大きなメリットです。ストップは短く、低く、そして鋭く切ることができ、相手に安易な攻撃をさせません。あるレビューでは「擦る技術(ツッツキや擦るフリックなど)はやりやすいですし回転量も有り相手が嫌がりますね」と評価されており、前陣での先手の取り合いで優位に立てます。
守備技術:カットマンやブロックの適性
キョウヒョウ プロ2は攻撃的なラバーですが、その回転性能は守備技術にも活かせます。特にカットマンにとっては、相手のドライブを強烈な下回転で切り返す「ブツ切れカット」の武器となります。試打レビューでは「カットの威力の高さには驚きました」と述べられており、守備から攻撃に転じるチャンスを作り出せます。ただし、弾みをコントロールする技術は必須です。ブロックに関しては、ただ当てるだけではボールが落ちやすいため、少し押し込むようにして回転をかける意識が安定性を高める鍵となります。
ライバル比較:キョウヒョウ プロ3との違い
キョウヒョウシリーズを選ぶ際に最も悩むのが、「プロ2」と「プロ3」の選択でしょう。両者は同じ「プロ仕様」でありながら、そのコンセプトは異なります。
キョウヒョウ プロ2: スピン特化型。回転量を最優先。
キョウヒョウ プロ3: バランス型。高いスピン性能にスピードをプラス。
卓球通の記事では、「スピンをとにかく重視ならば間違えなく”キョウヒョウプロ2″を!スピードを重視するなら”キョウヒョウプロ3″がオススメです!」と明確に解説されています。公式性能値でも、プロ3はプロ2に比べてスピードが「10.25」と高く、スピンは「15.00」とわずかに低く設定されています。
使用者の中には「個人的にはプロ2一択」「スピードはプロ2の方がいいです。回転もやはりプロ2です」という意見もあり、体感速度は一概には言えない部分もありますが、一般的には以下のように選択するのが良いでしょう。
- とにかく回転量で相手を圧倒したい、前陣でのプレーが中心: キョウヒョウ プロ2
- 回転量に加え、一発のスピードや威力も欲しい、中陣でも戦いたい: キョウヒョウ プロ3
6. 推奨されるプレイヤー像とラケットの組み合わせ
これまでの分析を踏まえ、キョウヒョウ プロ2がどのようなプレイヤーに最適かをまとめます。
【推奨プレイヤー像】
- 回転至上主義者: スピードよりもボールの回転量を何よりも重視するプレイヤー。
- 前陣速攻型・台上プレー重視型: 前陣に張り付き、サーブ・レシーブからの展開や、切れ味鋭い台上技術で得点を重ねるスタイルの選手。
- パワーヒッター: 自分のスイングでラバーの性能を最大限に引き出せる、十分な筋力とスイングスピードを持つ中〜上級者。
- 攻撃的なカットマン: 守備で粘りつつ、カットの切れ味と反撃のドライブで得点を狙う選手。
【推奨ラケットの組み合わせ】
キョウヒョウ プロ2の性能を最大限に引き出すためには、ラケットとの相性も重要です。弾みが控えめな点を考慮すると、以下のような組み合わせが考えられます。
- 弾みを補う組み合わせ: アウターカーボンのような弾みの良いラケットと組み合わせることで、スピード不足を補い、中陣からでも威力のあるボールを打つことが可能になります。卓球ログでもこの組み合わせが推奨されています。
- 回転を最大化する組み合わせ: しなりのある木材5枚合板や7枚合板と組み合わせることで、ボールを掴む感覚がさらに増し、回転性能を極限まで高めることができます。ただし、ボールを飛ばすにはより一層のパワーが必要となります。
自身のプレースタイルと、ラバーに何を求めるかによって最適な組み合わせは変わります。試行錯誤を重ねて、自分だけの「黄金の組み合わせ」を見つけるのも卓球の醍醐味の一つです。
7. 価格と購入情報
キョウヒョウ プロ2のメーカー希望小売価格は¥5,500(税込)です。
卓球専門店や大手オンラインショップでは、割引価格で販売されていることが多く、実売価格は3,800円台から4,500円前後が相場となっています(2025年11月時点)。
人気の高いラバーであるため、多くの店舗で取り扱いがありますが、特に「特厚」などの特定の厚さは品切れになることもあります。購入を検討する際は、複数のショップの在庫状況を確認することをおすすめします。
8. まとめ:究極のスピンを求めるプレイヤーへの答え
ニッタク「キョウヒョウ プロ2」は、「究極のスピン性能」という一点において、他の追随を許さない孤高の存在です。その強烈な回転は、ループドライブ、サーブ、カットなど、あらゆる技術の質を劇的に向上させるポテンシャルを秘めています。
しかし、その代償としてスピード性能は控えめで、重量もあり、使いこなすには相応のパワーと技術が求められる、まさに「玄人向け」のラバーです。テンションラバーのような手軽さや爽快感を求めるプレイヤーには向きませんが、自らの力でボールを操り、一球一球の回転量で相手をねじ伏せる快感を求めるプレイヤーにとっては、これ以上ない最高のパートナーとなるでしょう。
もしあなたが、今のプレーにさらなる「回転」というスパイスを加えたいと考えているなら、このキョウヒョウ プロ2を試す価値は十分にあります。その強烈な粘着シートが、あなたの卓球を新たなステージへと導いてくれるかもしれません。






