2023年4月、卓球用品メーカーのバタフライは、新たなハイパフォーマンスラバー「グレイザー」シリーズを発売しました。トップ選手向けのフラッグシップモデル「ディグニクス」シリーズで培われた技術を応用しつつ、より幅広い層のプレーヤーがその性能を体感できるよう開発された本シリーズは、発売以来大きな注目を集めています。本記事では、グレイザーシリーズのコンセプト、性能、そしてどのような選手に適しているのかを、公式情報とユーザーレビューを基に徹底的に解説します。
グレイザーシリーズのコンセプト:高性能と使いやすさの両立
グレイザーシリーズの核心は、「ディグニクスの魅力を、より多くのプレーヤーに」というコンセプトにあります。バタフライは、トップ選手が使用するディグニクスシリーズに搭載されている高性能スポンジ「スプリング スポンジX」をグレイザーシリーズにも採用。一方で、スポンジ硬度をディグニクスよりも2度軟らかく設定することで、ボールの食い込みを良くし、扱いやすさを大幅に向上させました。
一般的に、スポンジが硬めのラバーはその性能を最大限に引き出すために速いスイングスピードが求められますが、軟らかめのスポンジはボールがラバーに食い込みやすく、打球が安定する特徴があります。スイングスピードに自信がないプレーヤーにも使いやすく、ラバーの性能を引き出しやすいのです。
この設計思想により、グレイザーはトップモデルに匹敵するポテンシャルを持ちながら、中級者から上級者まで、幅広いレベルのプレーヤーがその技術的恩恵を受けられるラバーとなっています。さらに、メーカー希望小売価格を6,050円(税込)に設定し、性能と価格のバランスを追求している点も大きな魅力です。
製品ラインナップと性能比較
グレイザーシリーズは、プレースタイルに合わせて選べる2種類のラバーをラインナップしています。それぞれが異なる特性を持ち、プレーヤーの目指す卓球を実現するための選択肢を提供します。
グレイザー:威力と安定性のバランス型
「グレイザー」は、非粘着性のハイテンション裏ソフトラバーです。スポンジ硬度を38度に設定し、シリーズの中でも特にコントロール性能と安定性を重視しています。球持ちの良さが特徴で、回転をかけたドライブが安定した弧線を描きやすく、ラリー戦での安心感をもたらします。威力と安定性を高いレベルで両立させたい、オールラウンドなプレーを目指す選手に最適です。
グレイザー09C:粘着性による強回転追求型
「グレイザー09C」は、粘着性トップシートを採用したハイテンション裏ソフトラバーです。スポンジ硬度は42度とグレイザーより硬めに設定されており、粘着性ラバー特有の強烈な回転量と、テンション技術による弾みを両立しています。台上技術でのボールの掴みやすさや、サーブ・レシーブでの回転性能を重視する選手、特に粘着性ラバーへの移行を考えているプレーヤーにとって、最適な入門ラバーと言えるでしょう。
グレイザーの3大特徴
多くのユーザーレビューや専門サイトの評価から、特に「グレイザー」(非粘着性)が持つ3つの際立った特徴が見えてきます。
1. ディグニクスに迫るボールスピード
グレイザーはスポンジが軟らかめに設定されているにもかかわらず、そのボールスピードは上位モデルのディグニクスに引けを取らないと評価されています。これは、反発弾性の高い「スプリング スポンジX」と、エネルギー効率に優れたトップシートの組み合わせによるものです。中〜強打時にスポンジがしっかりと食い込むことで、プレーヤーのスイングパワーをロスなくボールに伝え、鋭いスピードボールを生み出すことができます。
2. 安定した弧線によるミスの少なさ
「ボールがネットに落ちることがほぼない」と評されるほど、安定した弧線を描きやすいのがグレイザーの大きな特徴です。卓球メディア「Rallys」のレビューによれば、「スプリング スポンジX」がボールを「つかむ」感覚を向上させ、打球が自然に上に上がりやすくなっています。これにより、特に下回転に対するドライブが非常に安定し、ネットミスを恐れずに積極的に攻撃を仕掛けることが可能になります。
3. 優れたコントロール性能
硬度38度の軟らかいスポンジは、優れたコントロール性能をもたらします。ボールがラバーに深く食い込むため、打球感が手に伝わりやすく、繊細なボールタッチが可能です。あるユーザーレビューでは、ブロック時に相手の球威を吸収しやすく、多少ラケット角度がずれても安定した返球ができると述べられています。また、チキータなどの台上技術においても、ボールをしっかり掴んでコントロールしやすいため、レシーブから先手を取る展開を作りやすくなります。
どのような選手におすすめか?
これらの特徴を踏まえ、グレイザーシリーズは以下のような選手に特におすすめできます。
フォアハンドの武器を探す中〜上級者
スピードとスピン性能を高いレベルで両立しているグレイザーは、フォアハンドの決定力を高めたい中〜上級者に最適です。ディグニクスほどのパワーはなくても、安定して質の高いドライブを連打したい選手にとって、強力な武器となるでしょう。
攻撃性と安定感を両立させたい選手
「攻撃したいけれど、ミスは減らしたい」というジレンマを抱える選手にとって、グレイザーは理想的な解決策となり得ます。ボールコントロールが容易なため、ラリーの安定感を保ちながら、チャンスボールは確実に打ち抜くという、堅実かつ攻撃的なプレースタイルをサポートします。
ディグニクスシリーズへのステップアップを目指す選手
バタフライ自身が示唆しているように、グレイザーシリーズはディグニクスシリーズへの「橋渡し」としての役割も担っています。
- 非粘着性ラバーを使い続けたい選手:グレイザー → ディグニクス05 / 80 / 64
- 粘着性ラバーに挑戦したい選手:グレイザー09C → ディグニクス09C
このように、グレイザーで「スプリング スポンジX」の感覚に慣れ、技術レベルが向上した後に、よりプロ仕様のディグニクスへスムーズに移行することが可能です。
価格とコストパフォーマンス
グレイザーシリーズのメーカー希望小売価格は6,050円(税込)です。これは、テナジーシリーズ(8,000円台)やディグニクスシリーズ(9,000円台)と比較すると、かなり手に入れやすい価格設定です。
実際の市場価格を見ると、通販サイトなどでは4,500円前後から購入可能な場合もあり、コストパフォーマンスは非常に高いと言えます。卓球ナビのレビュー評価では、48件のレビューで平均8.9/10点という高評価を得ており、多くのユーザーがその性能と価格に満足していることがうかがえます。トップモデルの技術を手頃な価格で体験できる点は、グレイザーシリーズが多くのプレーヤーに支持される大きな理由の一つです。
まとめ:勝利への新たな選択肢
バタフライの「グレイザー」シリーズは、トップモデル「ディグニクス」の高性能なDNAを受け継ぎながら、優れたコントロール性能とコストパフォーマンスを実現した画期的なラバーです。威力、安定性、操作性のバランスが絶妙に調整されており、中級者から上級者まで、幅広いプレーヤーのレベルアップを力強くサポートします。
自分のプレースタイルに伸び悩みを感じている選手や、次のステップに進むための新しい武器を探している選手にとって、グレイザーシリーズは間違いなく試す価値のある選択肢と言えるでしょう。このラバーと共に、これまで以上にダイナミックで安定した卓球を追求してみてはいかがでしょうか。




