モリストLPとは？
ニッタク（Nittaku）が提供する「モリストLP」は、卓球ラバーの中でも特に個性的な「粒高ラバー」のカテゴリーに属しながら、現代卓球の高速化に対応するテンション技術を搭載した画期的な製品です。従来の粒高ラバーが持つ「変化」や「守備力」に加え、スピードのある攻撃を可能にすることを目指して開発されました。公式情報によれば、そのコンセプトは「変化とアタック」であり、守備的な選手だけでなく、攻撃的な異質攻撃型の選手からも高い評価を得ています。
やわらかく食い込むことで変化はもちろん、スピードあるナックルを実現。スマッシュでの反撃の威力にも定評があります。
この記事では、モリストLPの基本性能から技術的特徴、実戦での評価、そして姉妹品である「モリストLPワン」との違いまで、参考資料を基に多角的に徹底解剖します。
製品の基本情報と技術的背景
基本スペック
モリストLPは、ドイツで製造されるテンション系の粒高ソフト変化系ラバーです。以下に主要なスペックをまとめます。
- 品番: NR-8673
- 価格: ¥6,050 (税抜 ¥5,500)
- 分類: 粒高ソフト変化系
- スポンジ厚さ: 極薄 (GU), 薄 (U)
- カラー: レッド (20), ブラック (71)
- スポンジ硬度: 40.0 (ドイツ基準: 50.0)
- 原産国: ドイツ
また、スポンジのない一枚ラバーとして「モリストLPワン」（品番: NR-8674）もラインナップされており、こちらはよりコントロールと変化を重視したモデルです。モリストLPワンは、接着用両面シートが付属しています。
革新的なテンション技術
モリストLPの最大の特徴は、ラバーシートとスポンジに内蔵されたテンション技術です。ニッタクの技術説明によると、ラバーのゴム分子が常にスピードグルーを塗ったような「テンション状態」に保たれています。これにより、従来の粒高ラバーとは一線を画す弾力が生まれます。
この技術がもたらす主な効果は以下の通りです。
- 優れた食い込み: 打球時にボールがラバーの中に深く食い込み、ボールを掴む感覚が向上します。これにより、コントロール性能が格段に高まります。
- 高い反発力: テンション効果により、粒高ラバーでありながらスピードのあるボールを繰り出すことが可能です。特にプッシュやスマッシュといった攻撃的な技術でその威力を発揮します。
- 驚くべき粒高効果: 柔らかい粒がしなやかに倒れることで、強い回転反転効果や予測不能なナックルボールを生み出し、相手を幻惑します。
ただし、この特殊なスポンジはデリケートなため、ラバーを張り替える際にはゆっくりと剥がす注意が必要です。
性能分析：データが示すラバーの特性
公式性能値の可視化
ニッタク公式サイトが公表しているモリストLPの性能値をグラフで見てみましょう。スピード、スピン、そして粒高ラバーで重要な「変化」の3つの指標で評価されています。
グラフから明らかなように、「変化」の値が14.00と突出して高いことがわかります。これは、粒が倒れやすく、相手の回転を強く反転させる能力に長けていることを示しています。一方で、「スピード」も6.50と、守備用ラバーとしては比較的高めの数値です。これはテンション技術によるもので、攻撃時に十分な威力を確保できることを意味します。「スピン」は5.00と控えめですが、これは粒高ラバーが自ら回転をかけるのではなく、相手の回転を利用・反転させる特性を反映しています。
モリストLP vs LPワン：スポンジの有無がもたらす違い
モリストLPシリーズには、スポンジ付きの「LP」とスポンジなし（一枚ラバー/OX）の「LPワン」があります。この違いが性能にどう影響するかを比較します。
- モリストLP (スポンジあり): スポンジがボールの威力を吸収しつつ、テンション効果で弾き出すため、スピードのある攻撃がしやすくなります。球持ちも良くなり、安定したカットやブロックが可能です。攻撃も重視するオールラウンドな異質攻守型に向いています。
- モリストLPワン (一枚ラバー): スポンジがないため、打球感がダイレクトに手に伝わり、ボールコントロールが非常にシビアになります。その分、粒の変化が最大限に引き出され、低く止まるブロックや切れ味の鋭いナックルプッシュなど、より「嫌らしい」ボールを出すことに特化しています。レビューサイトでは「市場で最も遅いラバーの一つ」と評されるほど、球速を殺す能力に長けています。
簡単に言えば、攻撃力と安定性の「LP」、変化とコントロールの「LPワン」という棲み分けができます。どちらを選ぶかは、自身のプレースタイルと、粒高ラバーに何を最も求めるかによって決まります。
プレースタイル別評価：攻撃から守備まで
「打てる粒高」としての攻撃性能
モリストLPは「打てる粒高」として多くのレビューで高く評価されています。従来の粒高ラバーでは難しかった攻撃的なプレーが、このラバーでは実用レベルで可能です。
特に評価が高いのは、プッシュとスマッシュです。テンションがかかっているため、少し押し込むだけでスピードのある伸びる球が出せます。あるレビュアーは「やや下から上気味にやると速くて伸びる嫌な球が出た」と述べており、コースを突くことで相手の意表を突く先手攻撃が可能になります。
また、ミート打ちも強力です。強くミートした際には「表ソフト並みの攻撃力がある」との声もあり、回転に鈍感な特性を活かして相手のサーブやツッツキを狙い打つことができます。異質攻撃型の選手にとっては、ドライブとミートを使い分けることで、多彩な攻撃パターンを構築できるでしょう。
安定性と変化を兼ね備えた守備性能
攻撃性能が注目されがちなモリストLPですが、守備においてもその真価を発揮します。特にカット主戦型の選手からは「カットがしやすい」「安定しててカットも低く出せる」といった評価が寄せられています。ユーザーレビューでは、元韓国代表のカットマン朱世赫選手の名前を挙げて推奨する声も見られます。
ブロックにおいては、相手の強打を吸収し、ナックル性のボールで返すことが得意です。極端に切れたり、いやらしい変化が出たりするタイプではありませんが、その分コントロールがしやすく、安定して相手コートに返球できます。あるブログでは「ボールの落下点と着地後の挙動が読めない」と表現されており、失速したり伸びたりする独特の弾道で相手のミスを誘います。
他社製品との比較：モリストLPの独自性
モリストLPの立ち位置をより明確にするため、他の人気粒高ラバーと比較してみましょう。海外のレビューでよく比較対象となるのが「Tibhar Grass D.TecS」や「sauer & tröger Hellfire X」です。
Compared to Hellfire X, Moristo LP is less “evil” but much more reliable. With Hellfire X I could sometimes create nasty balls, but I also made a lot more mistakes.
このレビューが示すように、モリストLPは「えげつなさ（evil）」では他の特化型ラバーに一歩譲るものの、圧倒的な信頼性（reliable）と安定性が強みです。試合を通してミスを減らし、ラリーを支配したいプレイヤーにとって、このバランスの良さは大きな武器となります。攻撃の選択肢も残されているため、守備一辺倒にならず、戦術の幅を広げることができます。
使用者レビューから見る実戦での評価
様々なバックグラウンドを持つプレイヤーからのレビューは、モリストLPの多面的な性能を浮き彫りにします。
- 異質攻撃型の選手から: 「プッシュが速く、短期決戦に持ち込みやすい」「ドライブとミートの使い分けがしやすく、先手が取れる」 と、攻撃面でのアドバンテージを評価する声が多数あります。
- カットマンから: 「カットが非常にやりやすい」「カールP1ソフトより飛距離があるのに安定している」 と、守備の安定性とカットの質を両立できる点が支持されています。ただし、弾みが強いため「攻撃重視のカットマン向け」という意見もあります。
- ペン粒の選手から: 「プッシュやカット、粒高ドライブといった技術がやりやすい。安定感を求める人におすすめ」 と、オールラウンドな性能が評価されています。
一方で、「弾みすぎてコントロール不能に陥ることがある」 という声や、「使いこなすには技術が必要」という指摘も見られます。テンション系特有の弾みを制御し、そのエネルギーを意図したボールに変換する技術が求められるラバーと言えるでしょう。
結論：どのようなプレイヤーにおすすめか？
ニッタク モリストLPは、従来の粒高ラバーの枠を超えた、非常にバランスの取れた高性能ラバーです。その特性を最大限に活かせるのは、以下のようなプレイヤーでしょう。
- 攻撃的な異質攻守型プレイヤー: 粒高バックで安定したブロックや変化をつけつつ、チャンスボールは積極的に攻撃して得点したい選手。プッシュやスマッシュを武器に、試合の主導権を握りたい方に最適です。
- 現代的なカット主戦型プレイヤー: 安定したカットで粘り強く守りながらも、機を見て反撃に転じたい選手。従来の守備的な粒高よりも飛距離とスピードが出るため、中～後陣でのプレーにも対応できます。
- 安定性を重視する粒高ユーザー: 極端な変化よりも、ミスなく安定してラリーを続けたい選手。モリストLPは、試合を通して信頼できるパートナーとなり、相手のミスを誘いながら着実にポイントを重ねるスタイルをサポートします。
モリストLPは、「変化」と「スピード」、「安定性」と「攻撃力」という、時に相反する要素を高次元で融合させたラバーです。自分のプレースタイルに新たな可能性を加えたいと考えているなら、試してみる価値は十分にあるでしょう。
